2017年6月3日に開催した集会「ヘイトスピーチ解消法施行1年 ~その現状と課題、人種差別撤廃基本法の実現へ」で、以下のアピール文が提起され、採択されました。


差別に苦しむマイノリティと、共に差別と闘う人々は、長年、国際人権基準に合致する人種差別撤廃法制度を求めてきた。1年前に成立・施行されたヘイトスピーチ解消法(「本邦外出身者に 対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)は、これまで深刻な人種差別の存在自体を否定してきた国が、はじめてその被害を認め、緊急な課題として解消に取り組むことを宣言した反人種差別法であった。人種差別の中の在日外国人に対するヘイトスピーチに限定し、かつ、禁止事項もない理念法という大変不十分な内容ではあるが、それでも長年の闘い抜きでは実現し得なかった成果であり、私たちはこの法律を差別撤廃のために活用し、また、次の法整備につなげることを誓った。

成立から1年、ヘイトデモに対し警察がヘイトスピーチをしないようアナウンスし、川崎桜本と大阪鶴橋でデモ禁止の仮処分が出るなどした結果、ヘイトデモの回数、参加者数は減少した。警察のカウンターを敵視する態度はある程度是正された。しかし、届出不要のヘイト街宣の回数は減っていない。また、ネット上のヘイトスピーチに対しては法務省人権擁護局が被害者の申立てによりプロバイダーに何度も削除要請し、一部削除されたが、全体的には野放し状態である。
国がヘイトスピーチ解消のために、解消法に基づいてやるべきこと、できることは、選挙活動を悪用するなど悪質なヘイトスピーチがなされた場合、個別具体的なヘイトスピーチに対し即座に首相や法務大臣が公的に批判すること、プロバイダーが自主的ルールを忠実に実施してヘイトスピーチを迅速に削除するよう合意を取り付けること、学校教育において反ヘイト教育をカリキュラムに入れること、全警察官に研修を行うことなど、多方面にわたってある。私たちは、そのような具体的な要求をもって国と交渉してきたが、まだ多くが実現していない。
他方、川崎市、京都府、名古屋市などいくつもの地方自治体は、解消法成立を契機に公共施設の利用制限や条例化など実効性ある取り組みを進めている。ほかの地方自治体や国の取り組みを促す意義も大きい。しかし、日弁連の調査結果にも見られるように、大半の地方自治体はまだ様子見にとどまっている。
もとより、同法はヘイトスピーチのみを対象とする点で限界がある。今年3月に発表された法務省の「外国人住民調査報告書」でも在日外国人の4割が入居差別を経験するなど深刻な差別の実態がある。また、人種差別撤廃委員会などから何度も指摘されているように、高校無償化制度からの朝鮮学校の排除、地方自治体による補助金カットなど、国や地方自治体による公的な差別が、深刻な差別を悪化させている。

以上から、私たちは、国および地方自治体に対し、共通の課題として、ヘイトスピーチ解消法を実効化し、さらに、国際人権法上の義務に合致した人種差別撤廃政策と法整備を速やかに整備するよう、下記のことを求める。

  1. 政府は、ヘイトスピーチ解消のための速やかに基本方針、基本計画をたて、総合的に政府全体で対策を進めること。
  2. 関係各省庁はヘイトスピーチ解消法に基づき、ネット対策、個別具体的なヘイトスピーチへの公的な批判など、ヘイトスピーチ解消のため実効ある施策を直ちに実行すること。
  3. 地方自治体は、ヘイトスピーチ解消法を実効化するため、人種差別撤廃条例制定などを速やかに進めること
  4. 国は、ヘイトスピーチを含む人種差別全体の撤廃を総合的に進めるため、直ちに人種差別撤廃基本法を制定すること。
  5. 国および地方自治体は、国連人権理事会、人種差別撤廃委員会などの勧告を真摯に受け止め、公的な差別を直ちに改めること
  6. 国は、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに、国際人権基準に合致する人種差別禁止法、個人通報制度、国内人権機関など人種差別撤廃法制度を整備すること。

2017年6月3日
「ヘイトスピーチ解消法施行1年」集会参加者一同
外国人人権法連絡会、移住者と連帯する全国ネットワーク、人種差別撤廃ネットワーク、のりこえねっと、ヒューマンライツナウ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です