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「出入国管理及び難民認定法及び法務省設置法の一部を改正する法律案」に関し、不当な差別を受けないための立法措置に向けた規定を追加し修正することを求める NGO共同要請書簡

内閣総理大臣 安倍晋三 殿、 法務大臣 山下貴司 殿

日本においては、人手不足に対応するために外国人労働者が急増しており、2020年東京オリンピック・パラリンピックを機会に多くの外国人が日本を訪れることも見込まれております。

このように日本に滞在する外国人や外国にルーツを持つ人びとの大幅な増加が見込まれ、かつ、外国人労働者に対する政策も大転換を迎えているにも拘らず日本には、多くの国々と異なり、人種、民族、肌の色、出身国、宗教等による不当な差別的取り扱いを禁止する法律がありません。

外国人受け入れについて日本が転機を迎えるにあたっては包括的な政策の導入が必要ですが、その基礎となる重要な施策の一つが人種差別を防止・禁止する法律です。また、人種差別を撤廃する政策をとることは日本政府の国際法上の責務でもあります。

外国人等が不当な差別や排除から守られることは、当事者である外国人等にとっての基本的人権であることは言うまでもありません。不条理な差別や排除を経験すると、人の心は深い悲しみを経験し、屈辱を感じ、その尊厳は傷つき、「多大な苦痛を強いられ」ます(「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」、いわゆる「ヘイトスピーチ解消法」前文)。

そして、ヘイトスピーチをはじめとする差別は、社会に憎しみと暴力を蔓延させて「社会に深刻な亀裂を生じさせてい」ます(同上、ヘイトスピーチ解消法前文)。外国人等が不当な差別や排除から守られる日本社会で共生できることは、日本社会にとっても極めて重要かつ有益なのです。

そこで政府に対し、下記の規定を入管法改正案に修正して追加するよう求めます。

<入管法改正案を修正して追加すべき規定案>
●政府は、外国人がその人種、民族、肌の色、出身国、宗教等により不当な差別を受けることなく日本社会で共生していくための施策を講じるとともに、そのために必要な法制上の措置については、この法律の施行後二年以内を目処として講ずるものとする。


賛同団体【50音順】
(16団体、2018年12月4日正午現在)

Anti-Racism Project(ARP)
特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人種差別撤廃法」の制定を求める連絡会(外国人人権法連絡会)
特定非営利活動法人 コリアNGOセンター
在日大韓基督教会 在日韓国人問題研究所(RAIK)
差別・排外主義に反対する連絡会
公益社団法人自由人権協会
人種差別撤廃NGOネットワーク
特定非営利活動法人 名古屋難民支援室 [1]
NPO法人難民自立支援ネットワーク(REN)
日本カトリック難民移住移動者委員会
反差別国際運動
国際人権NGOヒューマン・ライツ・ウォッチ
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
ヘイトスピーチとレイシズムを乗り越える国際ネットワーク

[1] 特定非営利活動法人名古屋難民支援室については、「今回の入管法改正において、問題となっている問題点、すなわち、技能実習生の大多数が最低賃金法違反、無視の過酷な就労を強いられ、現実に差別を受けている現状が指摘されていることを深く反省し、真摯に受け止めるべきことから、本件提案は、不可欠の課題であり、本件緊急提案を行うものである。」という理由付きでの賛同である。

「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」に対する声明

東京都は本年2018年9月19日、都議会に「東京都オリンピック憲章にうたわれる人権尊重の理念の実現を目指す条例案」(以下、都条例案)を提出した。
私たちは、東京都が「様々な人権に関する不当な差別と許さない」ことを掲げる人権条例を制定すること、その中に、差別禁止条項を含む「多様な性の理解の推進」に関する章が設けられたこと、及び、「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消にむけた取組の推進に関する法律」(以下、解消法)4条2項に基づいて地方公共団体が実施する、不当な差別的言動の解消に取り組む章が設けられたことを歓迎する。都道府県レベルではじめて解消法の実効化を条例制定の形で行うものであり、東京都の取組は国及び他の地方公共団体の取組を促進することを期待したい。解消法施行後2年以上過ぎても、実効化のスピードが遅く、被害者に終わりの見えない苦痛と恐怖を日々もたらしている現状を切り崩す一助となりうる。
他方、条例案の内容は、本年6月に発表された「条例案概要」や、先行例である「大阪市ヘイトスピーチへの対処に関する条例」(以下、大阪市条例)、京都府などの公の施設等の利用に関するガイドラインになどと比べても、後退あるいはあいまい化している箇所が散見される。
私たちは、以下の点について、修正ないし条文解釈の明確化することにより、被害者救済のため実効性があり、かつ、濫用の危険性を防止する仕組みのある、よりよい都条例を制定することを切望するものである。

  1. 前文に、立法事実及び国際人権諸条約を入れる。
  2. 目的に、都による「いかなる差別も受けることがない」社会の実現が含まれることを明確化する。
  3. 3章に、2章の性的マイノリティに対する差別とパラレルに、人種等を理由とする差別的取扱い及び差別的言動の禁止条項、および都の基本計画制定義務など基本法的条項をいれる。
  4. 解消法が地方公共団体に求める相談体制整備(5条)、教育の充実(6条)、ネット対策及び差別の実態調査(附帯決議)を条項に入れる。
  5. 「不当な差別的言動」の定義(8条)を、解消法2条ではなく、人種差別撤廃条約1条1項の定義とする。
  6. 公の施設の利用制限の要件、効果、手続き等の基準を条文に入れる(11条)。
  7. 「不当な差別的言動」と認定された場合は、その概要は必ず公表するものとし、氏名若しくは名称の公表についての基準を条文に明記する(12条)。
  8. 審査会の委員は、人種差別撤廃に関する学識経験者の中から選び、必ずマイノリティ当事者を入れるようにし、都議会の同意を条件とする。委員の人数は20人以上とする(15条)。
  9. 都知事は審査会の意見を尊重すべきとの条項を入れる。
  10. 審査手続きにおいて表現行為者に意見を述べる機会を保障する。

理由はそれぞれ下記のとおりである。

1. 前文に、現在都内で多いときは週1ペースでヘイトデモ・街宣が行われ、また、外国籍住民の4割が入居差別、4人に1人が就職差別を経験するなど法務省の2017年3月発表の調査結果でも明らかになっている深刻な人種差別などの実態を、立法事実として示すべきである。
オリンピック憲章以前に、自由権規約や人種差別撤廃条約など、日本が締約国として履行義務がある諸条約があり、その履行が不十分と国際人権諸機関から何度も勧告されている現実から出発すべきである。

2.「条例案概要」では「あらゆる人がいかなる種類の差別も受けることがなく、人権尊重の理念が広く都民に一層浸透した社会を実現」となっていたが、都条例案では「いかなる種類の差別も許されないという、……人権尊重の理念が広く都民等に一層浸透した都市となることを目的」との表現になっている。理念の浸透は手段の一つであり、目的は、都による「いかなる差別も受けることがない」社会の実現であることを明確にすべきである。

3.都条例案は、ヘイトスピーチ対策のみを取り上げているが、ヘイトスピーチは人種差別の一部であり、人種差別全体に対する取組が不可欠である。オリンピック憲章も人種差別撤廃条約も人種差別全体の撤廃を求めている。
他方、都条例案は、性的マイノリティに対する差別については「不当な差別」全体の解消の推進を趣旨とし(3条)、「不当な差別的取扱い」の禁止規定を置き(第4条)、差別解消に向けての「基本計画」制定と必要な取組推進を都の責務としている(5条)。
都条例案は、解消法の実効化と位置付けられているが、解消法自体に基本法的条項がない。そのため東京都自らが、その旨を2016年9月13日付け要望書で法務省人権擁護局に指摘している。解消法に基本計画などの見通しがないことが、実効化が進まない一因となっている。国がそれらを示さない以上、都民の尊厳と安全に対し責任を持つ東京都が、性的マイノリティに対する差別対策と同様に、基本計画などを示すべきである。
また、大阪市条例には禁止条項がなく、拡散防止措置及び公表制度の主目的が啓発にとどまっており、特にネット上のヘイトスピーチに対しては実効性が弱いことは大阪市長も問題視している。差別撤廃の実効性のためには、最低限禁止規定と何らかの制裁規定が不可欠である。本年8月の国連人種差別撤廃委員会でもヘイトスピーチ、ヘイトクライムを含む包括的な差別禁止法の制定が勧告されている(para.8,14(b))。
この点、都条例案では性的マイノリティの不当な差別的取扱いについて禁止条項を入れているのだから、人種的マイノリティに対する差別的取扱いについて禁止しない理由はないはずである。
差別的言動については、表現の自由の過度の規制とならないよう、深刻な場合に限定した明確な定義と、第三者機関を置くべきである(東京弁護士会人種差別撤廃モデル条例案参照)。

4.都条例案では、解消法の求める基本的施策のうち啓発の推進(第10条)しか条文にないのは解消法の実効化としても不十分である。

5.都条例案では解消法第2条の定義を引用しており、対象が適法居住要件つきの在日外国人若しくはその子孫と非常に限定されている。本来、対象を人種差別撤廃条約第1条1項の定義する対象とすべきである。もし、解消法の定義を使うのであれば、最低限、川崎市の「公の施設利用許可に関するガイドライン」のように、衆参両院の附帯決議が、対象は解消法2条の規定するものに限定されないとしたことを示し、特段の配慮が必要である旨、明記すべきである。特に適法居住要件は、人種差別撤廃条約違反であり、今回の人種差別撤廃委員会による勧告(para13、14)でも批判されている。

6.「条例案概要」では、公の施設利用を不許可とする2つの要件(いわゆる言動要件と迷惑要件)の両方を充たすことが必要と明記されていたが、都条例案では要件が知事一任となっている。しかし、集会の利用制限は、憲法上重要な集会の自由の制限であるため、必要最小限の制限かつ公正な手続きによることが必要であり、過度の制限、濫用の危険性を防ぐため、都議会で議論の上、条文で定めるべきである。
また、要件は、言動要件のみにすべきであり、仮に両方を定めるなら、京都府、京都市のように選択的にすべきである。両方を必要とした川崎市ガイドラインでは要件が厳しすぎて実効性を確保できないことがすでに明らかになっている。
手続は、都民が審査を申請できるようにし、審査会(14条)の調査審議の対象とすべきである。

7.抑止の実効性確保のためには、悪質な場合には氏名もしくは名称を公表することが不可欠である。他方で濫用を防ぐ必要もあるため、知事に一任するのではなく、氏名などの公表についての基準を定め、公表内容についても事前に審査会の意見を聴くよう条例で定めるべきである。
また、都条例案12条は、ヘイトスピーチと認定した場合に、知事の判断で、概要も公表しないことができるように読めるが、それでは条例により認定された結果の全体像も不明確になってしまい、制度の意義も減殺させる。

8.審査会の委員は知事が委嘱することとなっているが、公正性、知事からの独立性を担保するために、大阪市条例と同様に都議会の同意を条件とすべきである。
審査会の委員の条件は、単なる学識経験者では不適切であり、ヘイトスピーチを含む人種差別撤廃に関する学識経験者とすべきである。
また、被害者の意見を聴くことは認定判断にとって不可欠であるから、審査会の委員には必ずマイノリティを入れるべきであり、その旨を東弁モデル条例案のように条項として明記すべきである。
人数については、大阪市の審査会の5人の委員による審査では、審査申出に対して1年以上経っても結論がでていないものもあり、人員が足りないことが明らかになっている。大阪市の約4倍もの人口を有する東京都の委員が5人では機能しないことが最初から明らかであり、最低限大阪市の4倍の人員は不可欠と考える。

9.審査会の意見に法的強制力がないのはやむを得ないが、都知事がその意見を尊重することを担保する条項を入れるべきである。例えば審査会の意見と違う決定をする場合は、その理由をつけて審査会に報告する制度などを導入すべきである(東弁モデル条例案参照)。

10.適正手続きの保障の観点から、差別的言動を行ったと思料される者の弁明の機会を保障すべきである(大阪市条例の第9条2項参照)。

なお、いかなる差別も許さないことを理念とする人権条例をつくるにあたっては、東京都が、同時に、朝鮮学校に対する補助金の再開(人種差別撤廃委員会の2014年勧告para.19)など、自らが人種差別撤廃条約2条1項cにより「政府(国及び地方)の政策を再検討し、および人種差別を生じさせ又は永続化させる効果を有するいかなる法令も改正し、阻止し又は無効にするための効果的措置をとる」義務を誠実に履行することを強く求めることを付言する。

2018年 9月 26日
外国人人権法連絡会
共同代表 田中宏 丹羽雅雄

 

声明文 PDF版(213KB) (※クリックすると別ウィンドウで表示されます)

5/30(水)院内集会「解消法施行から2年 ネットはヘイトにどう向き合うべきか」

▼日時: 2018年5月30日 (水) 15:30-17:00

▼会場: 参議院議員会館 B107会議室 (東京都千代田区永田町2-1-1)

▼発言者:

    • 津田大介さん(ジャーナリスト)
      「インターネットとヘイトスピーチ」
    • 金尚均さん(龍谷大学教員/刑法)
      「ドイツにおけるSNS上のヘイトスピーチ対策」
    • 川口泰司さん((一社)山口県人権啓発センター事務局長)
      「ネット社会と部落差別~現状と政策課題~」
    • コーディネーター:ハン・トンヒョンさん(日本映画大学教員/社会学)

▼主催:
外国人人権法連絡会/移住者と連帯する全国ネットワーク/人種差別撤廃NGOネットワーク/のりこえねっと/ヒューマンライツナウ

◆参加希望の方は、以下のフォームよりお申し込みください(定員50名)
https://goo.gl/forms/wNW9gVhzuhPRmlKH3
※当日参加も可能ですが、補助席あるいは立見となる場合があります。なお、嫌がらせやネットでの中傷等を目的としたご参加は固くお断りします。

チラシ ダウンロード(PDF、0.9MB)


2016年6月、ヘイトスピーチ解消法が施行されました。街頭での目立ったデモの抑制には一定の効果がありましたが、より小規模なデモや街宣は依然続いており、ここ最近は法律制定前に戻ったような状況さえ見られます。

そうした中であらためて直視しなければならないのは、街頭でのこうした動きの基盤となり、そしてその後も常にそれと連動する形で展開されてきた、ネット上でのヘイトスピーチです。そしてそこで標的となるマイノリティは、解消法の直接の対象となる在日コリアンやニューカマー外国人、アイヌ民族、琉球・沖縄の人々だけでなく、被差別部落出身者、性的マイノリティ、女性、障がい者など、きわめて多岐にわたっています。

この集会ではこうしたことをふまえて、海外の最新事情やマイノリティごとの文脈の違いも視野に入れながら、現在の日本のネット上のヘイトスピーチを包括的にとらえ、必要な政策課題を提言します。


 

◆賛同金のお願い◆
集会には講師の交通費や資料作成費など諸経費がかかります。ぜひ賛同をお願いします。
・個人賛同:一口 1000円
・団体賛同:一口 3000円

※賛同金は当日持参されるか、郵便振替番号00100-5-335113(口座名称:外国人人権法連絡会)までご送金ください。
※ご賛同いただける個人・団体でご希望の方には、当日配布する資料集に名前を掲載させていただきます。掲載を希望される方は、5月27日(日)までに 、下記連絡先までご連絡ください。
※ご賛同いただける個人・団体で集会に参加できない方には、後日資料集を郵送します。郵送を希望される方は、下記連絡先(メールアドレス)まで送付先を明記の上、ご連絡ください。

▼連絡先
外国人人権法連絡会(RAIK内)raik@kccj.jp

「日本国内の人種差別実態に関する調査報告書」2018年版

研究者、弁護士、市民団体メンバーの有志による「人種差別実態調査研究会」が、「日本国内の人種差別実態に関する調査報告書 2018年版」を公刊しました。

ご覧になりたい方は、以下のリンクをクリックしてください。


*人種差別実態調査研究会は、2016年4月に1回目の「調査報告書」を公刊しています。

「日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書」2018年版

外国人人権法連絡会では、毎年「日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書」を発刊しています。その2018年版を、2018年3月31日付で発刊しました。

下記の通り、外国人・民族的マイノリティについて包括的に取り上げ、最新の状況を知ることができます。ぜひご一読ください。

人権白書2018表1

●1冊 1,000円(送料込み)

 ※10冊以上購入の場合は、8掛け

【購入方法】
購入を希望される方は、下記のフォームに必要事項を入力し、送信してください。
お申し込み後、「人権白書」と郵便振替用紙を送ります。本が届いたら、郵便局で本代を振り込んでください。




【目次】

はじめに ――阪神教育闘争70年と世界人権宣言70年の交差

第1章●ゼノフォビアとヘイトスピーチ
1.国(行政)におけるヘイトスピーチ解消法実効化の現段階
2.ヘイトスピーチ解消に向けた各自治体でのとりくみ
3.川崎のヘイトスピーチ根絶に向けた運動
4.解消法成立後1年半のヘイトスピーチの現状
5.ネット上のヘイトスピーチ
6.選挙活動とヘイトスピーチ
7.ヘイトスピーチに関する裁判

第2章●人種差別
1.法務省外国人住民調査
2.公人による発言問題
3.首都東京の小池知事、その歴史認識と人権感覚が問われている
4.蓮舫議員の代表辞任にみる二重国籍者に対するマス・ヒステリー

第3章●移住労働者の受け入れ政策
1.スタートした新技能実習制度~新法は制度改善につながるのか
2.技能実習・介護は何をもたらすか
3.「強制帰国」が止まらない
4.技能実習生のうつ病に労災認定
5.ベトナムの送り出し事情
6.外国人家事労働者の現況
7.農業特区はどうなるか
8.労働搾取される「留学生」
9.韓国の雇用許可制度はいま

第4章●”先進国”日本の外国人管理体制
1.2017年の日本の難民問題
2.人権侵害を生み出す入管収容の現状
3.名古屋入国管理局におけるハンガーストライキ
4.収容現場の責任体制を問う ~グェンさん死亡事件
5.「仮放免」という檻のない牢屋
6.ペルー人家族の在特義務づけ訴訟から問う子どもと家族の権利
7.新たな国際的規範形成の潮流からみた日本へのシリア難民受入れ
8.在留資格取消しによる外国人「排除」
9.冤罪で奪われた15年~「再来日」したゴビンダさんは何を語ったか

第5章●移住女性の権利
1.ジャパニーズ・フィリピーノ・チルドレン(JFC)母子の人身取引
2.移住女性と在留資格
3.「リコン・アラート」:協議離婚制度へのアクション
4.熊本地震被災外国人のシングルマザー調査から
5.移住女性の就労実態調査から

第6章●マイノリティの子どもたちの権利
1.高校入試の特別枠と特別措置
2.日本語指導が必要な児童生徒の動向
3.夜間中学拡充への転換
4.子どもの教育支援のネットワークづくりに向けて
5.朝鮮高校無償化裁判、各地で一審判決
6.大阪府・市の朝鮮学校補助金不交付処分に対する行政訴訟
7.大阪の民族学校をいかに存続させていくか
8.外国籍教員の処遇
9.Jアラート、作文コンクールと学校現場の対応
10.日本生まれの非正規滞在者の子が闘い取った在留特別許可

第7章●地方自治体と外国人住民
1.自治体の外国人住民施策
2.外国人生活困窮者の自立支援への施策
3.外国籍地方公務員
4.外国人諮問会議

第8章●国際人権基準とマイノリティの権利
1.人種差別撤廃委員会の日本審査を目前にして
2.第3回国連UPR審査と人種差別関連の勧告
3.自由権規約とマイノリティの権利
4.アイヌ遺骨返還訴訟と今後の課題
5.琉球・沖縄 - 人権擁護者に対する人権弾圧

第9章●未解決のままの国家責任を問う
1.「慰安婦」問題、被害国に「要求」を突きつける加害国日本
2.在日の「慰安婦」裁判を闘かった宋神道さん逝く
3.文書公開がさらに進む過去清算問題
4.「慰安婦」像をめぐるサンフランシスコ市と大阪市の姉妹都市解消
5.徴用工問題をめぐる日韓政府の「溝」
6.関東大震災時の朝鮮人および中国人虐殺追悼・調査の取り組み

おわりに ~日本国憲法施行70年と人種差別・治安管理

資料1 在日外国人の人口動態
資料2 主要な国際人権条約と日本の批准状況
資料3 在留資格取消し件数
資料4 声明文 「日韓合意」は解決ではない 政府は加害責任を果たせ
資料5 朝鮮総聯中央本部銃撃事件への抗議声明

外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウム アピール

2018年4月14日に開かれた外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウムで、以下のアピール文が朗読され、参加者一同で確認しました。


外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウム アピール文

2016年6月にヘイトスピーチ解消法が施行された。同年暮れには、政府による外国人の人権状況に関する調査が実施され、深刻な入居差別や就職差別の実態の一端が明らかとなった。いずれも、日本においては初めて実現したものであり、人種差別撤廃条約が求める締約国の責務を履行するためのささやかな第一歩といえる

しかし、ヘイトデモ・街宣活動は今も全国各地で横行している。公人の差別発言も後を絶たない。2018年2月には、朝鮮総聯中央本部の銃撃という、衝撃的な手段によるヘイトクライムが発生したが、政府はこれを非難する意思を何ら表明しなかった。

いま求められているのは、ヘイトスピーチ解消法の実効化のみならず、人種差別を明確に禁止し、被害者が法的救済を受けることを可能にするとともに、国及び地方自治体が差別を解消するための実効性ある施策を講じるための根拠法となる、人種差別撤廃基本法の制定である。それは、これまで繰り返し人種差別撤廃委員会より勧告されてきたとおり、人種差別撤廃条約の締約国である日本の義務である。

政府はいまだ、立法に消極的な姿勢を変えていない。2017年にも、政府は、日本の人権状況に対する普遍的・定期的審査(UPR)のために国連人権理事会に提出した報告書において、憲法や各種法令により差別を禁止しているなどと従来の立場を繰り返した。2018年3月に採択されたUPRの結果文書では、多数の国から、人種差別を含む差別を禁止する包括的な差別禁止法の制定が勧告されたが、政府は受け入れなかった。本日の講演でも、日本の差別撤廃政策が国際人権水準からかけ離れていることが改めて明らかになった。

この8月に行われる人種差別撤廃委員会による日本審査においても、条約上の義務を履行しているかという観点から、厳しく日本政府の姿勢が問われることになるだろう。

私たちは、マイノリティの権利と尊厳が守られる社会の実現に向けて、次の一歩を進めるため、日本政府と国会に対し、ヘイトスピーチ解消法の実効化及び人種差別撤廃基本法を速やかに制定することを改めて強く求める。

また、これを実現させるために、マイノリティおよび平等を求めるすべての人々と連帯し、市民社会に働きかけ、力強く取り組んでいくことをここに決意する。

2018年4月14日
外国人人権法連絡会2018年総会 記念シンポジウム
「人種差別撤廃基本法を日本で実現させるために」参加者一同

外国人人権法連絡会2018総会記念シンポジウム「人種差別撤廃基本法を 日本で実現させるために』

「人種差別撤廃法」と「外国人・民族的マイノリティの人権基本法」「国内人権機関」の実現をめざして、弁護士・NGO・研究者が中心となり、2005年12月、外国人人権法連絡会が結成されました。

2016年6月に、日本で初の反人種差別法として、ヘイトスピーチ解消法(正式名称:本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律)が施行され、政府の取組みが根拠法をもって行なわれるようになりました。一部の地方自治体でも、条例づくりの作業が進められています。
しかしながら、ヘイトデモ・街宣活動は今も全国各地で行なわれており、今年2月には在日本朝鮮人総聯合会中央本部の建物が銃撃されるという事件まで起きてしまいました。人種差別根絶のための包括的な取組みが喫緊の課題であることは今も変わりなく、そのための根幹の一つとして、人種差別撤廃基本法の制定が強く求められています。
今年8月には、人種差別撤廃委員会による日本審査が行なわれます。国連人権条約機関の場において、日本における人種差別の実態が再び浮き彫りにされることになるでしょう。

私たちは、日本で人種差別撤廃基本法を実現させるために、これまで様々な取組みを行なってきましたが、今年の総会記念シンポジウムとして、諸外国における人権保障、ヘイトスピーチ規制についてじっくり学び、議論する場を設けることにしました。多くの方のご参加をお待ちしています。

 

◆日時◆
2018年4月14日 (土) 14:00~16:00(開場 13:30)

◆場所◆
在日本韓国YMCA 9階 2.8記念国際ホール
〔地図〕東京都千代田区猿楽町2-5-5
(JR・水道橋駅東口徒歩6分、地下鉄・神保町駅徒歩7分)

◆資料代◆ 1,000円(学生500円)
(新刊『日本における外国人・民族的マイノリティ
人権白書2018』〈外国人人権法連絡会編〉1冊を含む)

◆主催◆
外国人人権法連絡会 https://gjinkenh.wordpress.com

 

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プログラム
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●講演
「諸外国における外国人の人権保障とヘイトスピーチ規制」
近藤 敦さん(名城大学教授)
●全体討論
 登壇者:近藤 敦さん、丹羽雅雄さん(弁護士、外国人人権法連絡会共同代表)、師岡康子さん(弁護士、外国人人権法連絡会運営委員)
●アピール

 

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【お問合せ先】
◆在日韓国人問題研究所(RAIK)
〒169-0051 東京都新宿区西早稲田2-3-18
日本キリスト教会館52号室
TEL 03-3203-7575  FAX 03-3202-4977  raik@kccj.jp
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Statement :We Protest against Shooting at the Headquarters of the General Association of Korean Residents in Japan and Call on the Government of Japan to Take Firm Responses

28 February 2018

Japan Network towards Human Right Legislation
for Non-Japanese Nationals and Ethnic Minorities

Solidarity Network with Migrants Japan (SMJ)

NGO Network for the Elimination of Racial Discrimination Japan (ERD Net)

NORIKOE Net

Human Rights Now

According to media reporting, two men rode in a van up to the gate of the headquarters of the General Association of Korean Residents in Japan (Chongryon), in Chiyoda Ward, Tokyo, and fired several shots by the handgun at the building around 4:00 a.m. on 23 February. The two suspects are identified as Satoshi Katsurada (right-wing activist) and Yoshinori Kawamura (member of a right-wing association). Both of them were arrested on suspicion of vandalism and reportedly admitted to the charges. According to the Public Security Bureau of the Metropolitan Police Department, it is reported, Katsurada told the police that “A series of missile testing by North Korea breached my limit of patience” and that he had planned to ram the car into the headquarters.

Katsurada was an advisor to an organization that had conducted rallies and street propaganda activities involving hate speech in 2013 in Trusuhashi, Osaka, one of the areas with the largest Korean population in Japan, and led the activities of the organization. He has also made hateful remarks again and again in hate rallies and street propaganda activities targeting Koreans in Japan with their roots in the Korean Peninsula, whether in the northern or southern parts; for example, in a rally on 25 December 2016 entitled “Put an End to the Relationship with South Korea! Mass Rally of Rage by the Japanese Nation”, he said, “We, Japanese, will not succumb to any pressure by South Koreans in Japan, anti-Japan groups and futei senjin [literally “lawless and defiant Koreans”, a historical term to denigrate Koreans before the end of the World War II]”. The assault at the Chongryon is nothing but “hate crime” (crime motivated by discriminatory thinking) based on discriminatory and xenophobic feelings against Koreans in Japan.

Upholding a society where human rights and dignity of all is guaranteed, and as members of such a society, we hereby raise our voice of protest that this kind of hate crime is not permissible at all.

We strongly urge the Government of Japan to take firm responses to the criminal act by taking the following measures.

  1. Immediately issuing a statement to condemn the incident

The Government should issue a statement condemning the incident as an act of hate crime based on discriminatory and xenophobic feelings against Koreans in Japan. The Government should also announce that it would take firm measures against criminal acts based on discriminatory and xenophobic feelings against Koreans in Japan and other minority groups.

The Act for the Elimination of Hate Speech (the Act on the Promotion of Efforts to Eliminate Unfair Discriminatory Speech and Behavior against Persons Originating from Outside Japan of 2016) admits that hate speech has imposed tremendous pain and suffering on victims and caused serious rifts in the local community (Preamble) and that the elimination of hate speech is a pressing issue (Art. 1), providing that the national government has the responsibility to implement measures to eliminate it (Art. 4 (1)). The criminal act conducted by the two men was an assault using the ultimate act of violence, which is shooting, being far more serious than verbal attacks. In the light of the sufferings among Koreans in Japan, accompanied by enormous fear and hopelessness, as well as the seriousness of social rifts caused by the message that Koreans in Japan are not members of the same society and that it is acceptable to kill or wound them, the Government should fulfill its responsibility under the Act by condemning the crime immediately and explicitly.

  1. Investigating the incident as a form of hate crime and imposing severe punishment if it is found to be motivated by discriminatory feelings

A number of countries, including European countries and the United States, have developed legislation to deal with hate crime by imposing heavier sanctions on such offences, which are motivated by discriminatory feelings against particular minority groups, than regular offences. In these countries, criminal acts that may be motivated by discriminatory feelings against particular minority groups, such as the one referred to in the present statement, will be subjected to detailed inquiries into motivations as well and be punished with heavier sanctions than the ones imposed on regular offences. Although Japan does not have hate crime legislation, the Government has reported to the UN human rights monitoring bodies that it is possible to take the pernicious nature of motivations and impose heavier sanctions on this kind of crime. If it is found that the shooting was motivated by discriminatory feelings against Koreans in Japan, the offence should be treated as hate crime and be subject to heavier punishment than ordinary acts of vandalism.

  1. Preventing the reoccurrence of hate crime by xenophobic groups

Contrary to the dominant story that Chongryon is preparing for terrorism, Japan has experienced a series of hate crime cases committed by xenophobic groups or individuals who have xenophobic ideologies in recent years. A series of hate crime cases against Korean school students occurred in the 1990s, which made it impossible for them to wear ethnic-style uniforms. Since the 2000s, when rallies involving hate speech started to be organized, such cases have occurred more frequently, including the assaults on the Korean school in Kyoto (December 2009 – March 2010), the assault on the Korean high school in Kobe (January 2014), the arson attack on the Korean Cultural Center in Shinjuku, Tokyo (March 2015) and the arson attack on a branch of the Io Credit Association in Nagoya (May 2017). Suspected cases of hate crime have kept on occurring this year, including the incident in which the windows of a facility of the Korean Residents Union in Japan have been broken.

The shooting directly demonstrated the danger of criminal acts committed by xenophobic groups or individuals who have xenophobic ideologies. The police should seek to prevent the occurrence of hate crime by strengthening crackdowns on individuals and groups who express hatred and xenophobic ideologies against particular ethnic groups.

  1. Adoption of the legislation against racial discrimination and hate crime

The case of hate crime referred to in the present statement was committed by the individuals who have repeatedly made hateful remarks, which bears eloquent testimony to the fact that lack of measures against hate speech can directly result in hate crime and violence. It also highlighted the insufficient effect of the Act for the Elimination of Hate Speech without provisions to prohibit and sanction hate speech.

Japan does not have laws that prohibit racial discrimination itself; awareness of the unacceptable nature of racial discrimination remains to be low and the actual situation of racial discrimination in Japan is hardly taught in educational settings. After the shooting, there were some reactions that “[the shooting was] conducted by Koreans in Japan themselves” or that “Chongryon is worth being targeted”. The shooting and these reactions were partly caused by the weak social norms against racial discrimination. With a view to preventing cases of hate crime from occurring again, the Government should take measures to make the Act for the Elimination of Hate Speech effective and to promptly adopt the legislation against racial discrimination and hate crime.

In addition, we also call on the media to take it seriously that the incident, which demonstrate the escalation of xenophobic ideologies into the actual shooting, has made a number of Koreans in Japan and others with their roots in the Korean Peninsula, whether in the northern or southern parts, feel terrified and insecure. The media should inquire into and report on the background of the shooting and make it clearer that they will never tolerate hate crime.

We will keep on making efforts to create a society where human rights and dignity of all is guaranteed and everyone can live with a sense of security.