ウトロへの放火事件を受けて、STOPヘイトクライムを訴える集会が開催されます。
オンライン併用ですので、ぜひご参加下さい!



《ウトロでの放火事件を許さない! ヘイトクライムのない社会をめざす市民集会》

日時:2021年12月26日(日)14:00~
会場:同志社大学今出川キャンパス明徳館M21教室(オンライン併用 zoomウェビナー)
主催:京都府・京都市有効なヘイトスピーチ対策を求める会/同志社コリア研究センター/同志社大学人文科学研究所第8部門研究

【予定プログラム】
・ウトロ放火事件、映像上映
・ウトロの団体からの訴え
・求める会からヘイトクライム根絶をめざす訴え
・海外からオンライン中継、ビデオメッセージ
・集会アピール文の発信

主催団体から声明などが発表されています。
詳細はこちらをご覧ください。
2021年12月15日 ウトロ放火事件を受けた声明発表 「ヘイトクライム根絶をめざす声明文 ~ウトロ地区の放火事件を受けて」
※声明は本ページ下にも掲載

・お申込みはこちらから
「ウトロでの放火事件を許さない!ヘイトクライムのない社会をめざす市民集会」お申込みフォーム
※要申込み
〆切:12月24日(金)まで



ヘイトクライム根絶をめざす声明文 ~ウトロ地区の放火事件を受けて~

2021年12月15日

1 今年8月30日、京都府宇治市のウトロ地区で、住宅や倉庫など計7棟が焼け、地域の歴史を伝える資料が焼失しました。当初、建物の老朽化などが原因での失火と見られていましたが、12月6日、放火の疑いで容疑者が逮捕されました(非現住建造物放火罪(刑法109条))。同人は、7月、名古屋市の韓国民団(在日本大韓民国民団)愛知県本部と隣の名古屋韓国学校の排水管に火を付けて壊し、器物損壊の疑いで(刑法261条)、すでに10月に逮捕・起訴されています。

ウトロ地区では、来年2022年4月には地域の歴史を伝える平和祈念館が開館する予定です。その際に展示が計画されていた倉庫に保管されていた資料などおよそ40点が火事で焼けました。

ウトロ地区は、第二次世界大戦中に日本軍の戦争遂行のために集められた朝鮮人らが、戦後同地に住み続け、形成された在日朝鮮人集住地区です。ウトロ住民は、差別されながら幾多の困難を抱えて生き続けてきました。その意味では、ウトロ地区そのものが日本の朝鮮植民地支配と第二次世界大戦、戦後の在日朝鮮人の苦悩の歴史を今も語り続けています。ウトロでの放火は、7棟の家屋が焼失しただけでも大きな被害をもたらしましたが、それに加え戦前・戦後のウトロ地区とそこに生きてきた人々の歴史を証明するかけがえのないものを一瞬にして奪い去ったのです。

2 容疑者は、民族団体やウトロ地区など、朝鮮半島にルーツをもつ特定の民族集団を狙って、放火行為などに及んだとされます。これが事実であれば、容疑者のしたことは、ヘイトクライムに該当します。ヘイトクライムとは、皮膚の色、言語、宗教または信条、国籍または民族的または種族的出身、世系、年齢、障害、ジェンダー、性的指向・性自認等の属性を理由として、その集団又はその構成員に対して行われる犯罪です。記憶に新しいところでは、相模原市の障害者施設に入所していた人たちに対する差別動機に基づく殺傷事件(2016年)がありましたし、アメリカ合衆国での黒人に対する差別的動機に基づく警察の行為によるジョージ・フロイドさんの死亡事件等が起こり、それをきっかけにBlack Lives Matter運動が世界的に広がったことによっても、よく知られています(2020年)。しかしそれは氷山の一角でしかありません。在日朝鮮人への差別動機に基づく不当な取り扱いや犯罪はかつてからあり、その中には、司法の場で対応されなかったものも多数あります。近年では、ヘイトスピーチが蔓延し、社会問題となりました。

ヘイトクライムは、単なる個人の偶発的な犯罪ではありません。朝鮮の植民地支配に由来する朝鮮の人々への偏見、見下し、蔑みなどの差別意識とそれにもとづく不当な扱いが社会に根づき、今日にまで受け継がれてしまった一つの結果です。そうした土壌の一つの現れがヘイトスピーチ(インターネット上のものも含む)です。ヘイトスピーチは、単に「不快」な発言だというレベルの問題ではなく、さらなる物理的な暴力と社会的排除を促す土台となります。ヘイトスピーチによってさらに強まった差別意識により、朝鮮の人々に対する敵視、偏見そして憎悪を増長させ、同じ人間であることを否定して、罪の意識なく犯罪が行われてしまうにいたるのです。こうしてヘイトクライムが引きおこされるのであり、その意味において、これは社会が生み出した犯罪です。

被害を受けた側に目を向けても、ヘイトクライムは個別具体的な事件にとどまるものではありません。ヘイトクライムは、個人の法益を侵害・危険にさらすだけではなく、日本で生活する朝鮮人の生存権の否定、つまり対等な人間として生きる権利を否定します。ヘイトクライムは、単に一個人に向けられるものではなく、被害者が属するコミュニティや集団を狙って行われるものです。そのため、被害者が属するコミュニティに属する人たちは、誰もが被害者になり得ます。つまりヘイトクライムは、朝鮮の人々に対して、この社会では排除されるべき対象であるというメッセージを送るものです。したがってヘイトクライムは、朝鮮の人々とそのコミュニティにとっては、直接の攻撃を受けずとも、それ自体が脅迫的行為となります。ヘイトクライムを許容する社会では、特定の属性を持つ人びとが、人格権・生存権を否定されながら生き続けざるを得ない状況に置かれることになります。ヘイトクライムが一度かぎりのものであっても、それがもたらすダメージは、それほどに広く深いものです。

しかも、ヘイトクライムは、特定の属性をもつ人々を集団的に排除することを求めることから、私たちの社会の民主主義を切り崩すことにもなります。ヘイトクライムは、民主主義社会における根本基盤である対等で平等に生きることを否定するのです。それゆえ、ヘイトクライムは、個人にとってだけでなく、社会にとって危険な犯罪でもあります。

3 国連の自由権規約20条2項、人種差別撤廃条約4条は、条約締約国に対して人種差別動機に基づく犯罪への対応を求めています。また、人種差別撤廃委員会「市民でない者に対する差別に関する一般的勧告30」(2004年8月5日第65会期採択A/59/18 pp.93-97)では、条約締約国に対して「人種的動機または目的をもって犯罪をおこなったことが、より厳格な刑罰を求める刑の加重事由となるとする規定を刑事法の中に導入すること」(22項)を勧告しています。しかし、日本政府と立法機関は、これらに十分対応してきませんでした。そのため、刑事司法の場において、差別動機が解明の対象になってこなかったのです。そのため差別的動機や背景が明らかにならず、あったことがなかったことにされ、真実が矮小化されてしまうのです。

ヘイトスピーチを犯罪化するに際しては、しばしば対立利益としての表現の自由が問題になり、日本が人種差別撤廃条約4条a・b項を留保して批准したことが引き合いに出されます。しかし、ヘイトクライムに対して厳しい態度で臨むことは、表現の自由との対立がありませんから、先述の留保も問題になりません。表現の自由を重視してヘイトスピーチ規制に慎重であるアメリカ合衆国においても、ヘイトクライムの加重処罰は立法されており、頻繁に適用されています。ヘイトクライム対策に対して及び腰になる必要はありません。

日本ではようやく2016年にヘイトスピーチ解消法が制定されました。これを機に警察庁が出した通達「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消法に向けた取組の推進に関する法律の施行について」(2016年6月3日)において、「いわゆるヘイトスピーチといわれる言動やこれに伴う活動について違法行為を認知した際には厳正に対処するなどにより、不当な差別的言動の解消に向けた取組に寄与されたい」と示しています。本通達の趣旨は、ヘイトスピーチによって扇動された人々による犯罪(ヘイトクライム)への対処も含むことは多言を必要としません。人種差別事件があっても何もしないという態度は、人種差別に加担しているのと同じです。同様に、国家が人種差別的動機をもつ犯罪について何ら手当をしないということは、国家が人種差別的動機を許容しているのと同じです。

私たちは、このウトロ地区の放火事件を深刻に受け止め、ヘイトクライムを根絶するために、以下のことを司法行政機関に求めます。

1 人種差別撤廃条約等、日本国が加入している人種差別撤廃のための国際諸条約について、国内法上の実効化を求めます。

2 差別的動機が疑われる事件に際して、差別的動機を周到に解明するとともに、ヘイトクライムの危険性に即した起訴並び求刑をおこなうことを求めます。

これには、警察ならび検察が差別的動機を適切に解明すること、これを刑事裁判の場で明らかにすること、差別的動機を違法性及び責任判断(量刑判断)において考慮すること、刑事司法が差別解消に積極的に協力することを含みます。

3 インターネット上の差別扇動などの違法情報に対し、積極的に対応することを求めます。

これには、差別扇動を直接おこなっているサイトへの対応だけでなく、差別扇動サイトを支える広告企業などへの対応、さらには個別のSNSへの対応を含みます。

4 差別の防止・予防のために、行政諸機関間におけるネットワーク形成を求めます。

以 上


(参考) 合同発表声明

ウトロ地区での放火容疑者逮捕を受けて

2021年12月15日

一般財団法人ウトロ民間基金財団

8月30日にウトロ地区で倉庫、民家など7棟が被害を受ける火災が起こりました。当初は建物の老朽化による失火と見られていましたが、12月6日に京都府警は放火の疑いで奈良県在住の22歳男性を逮捕したことを発表しました。同容疑者は名古屋市内にある在日本大韓民国民団愛知県本部と隣接する名古屋韓国学校の排水管にも放火した容疑で10月に逮捕・起訴されています。

今回の事件はウトロの住宅が立ち並ぶ地区での放火で、住民の生命と財産を脅かす重大犯罪であり、決して許されるものではありません。また一連の事件がすべて在日コリアンの関連施設であることからも特定の民族に対する憎悪にもとづくヘイトクライムである可能性が高いと思われます。もしそうであれば、地区住民のみならず在日コリアンたちの平穏な生活を破壊し不安に貶める極めて深刻な問題であると言わざるをえません。

二度とこのような事件が起こらないように警察には犯行動機を含む事件の全容解明のための徹底した捜査を求めるとともに、日本政府・自治体がヘイトクライムを許さないという姿勢を明確にしていただきたいと思います。

朝鮮半島が日本の植民地となっていた時代、ウトロには飛行場建設が計画され、多くの朝鮮人が建設労働者として集められました。戦後、ウトロの土地が地上げ会社に転売れたことにより、一方的に立ち退きを迫られることになった住民は厳しい差別と困難に向き合いながらも生活と権利を守るために自ら立ち上がり声をあげました。

その声が日本市民、韓国市民に伝わって支援の輪が広がり、ウトロの土地を買い取り、そこに日本の行政が住環境整備のための集合住宅建設を進め、ウトロの新しいまちづくりが進められました。

こうしたウトロの歴史を伝える住民たちの思いが込められた立て看板など、貴重な資料が今回の放火で焼失することとなりました。建物の被害のみならず、ウトロ住民の伝えるべき記憶と記録が失われてしまうという取り返しのつかない被害が生じています。

2022年4月、ウトロには「ウトロ平和祈念館」が開館します。ウトロは、困難に直面しながら声を上げた住民たちと、ウトロと向き合ってきた日本市民、在日コリアン、そして韓国市民が協力して権利と暮らしを守った歴史をもつところです。この歴史は日本と朝鮮半島が互いに理解を深めあい、力を合わせることで新しい社会を築いていけることを示してくれています。互いが出会い、学びあうことで憎悪の連鎖を断ち切り、共に生きていく関係を築いていく、それこそが「ウトロ平和祈念館」の意義だと言えるでしょう。今回の放火事件のような差別と憎悪が向けられることのない社会のためにも「ウトロ平和祈念館」をぜひ多くの方々に活用していただきたいと思います。

憎しみの連鎖を断ち切るためには「差別」に対して厳しい姿勢で臨むと同時に、互いに出会い、学びあうことが不可欠です。そうした観点で日本の司法、行政には今回の放火事件に厳正な姿勢で対応することを求めるとともに、市民の皆様の「ウトロ平和祈念館」への関心とご支援を寄せてくださることをお願いする次第です。

以 上

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