カテゴリー: 集会アピール

【声明】排外主義にNO! ~誰もが人間として尊重され 差別なく共に生きる社会を~

2025年11月26日、外国人人権法連絡会はじめ8団体で院内集会「排外主義にNO! 誰もが人間として尊重され差別なく共に生きる社会を」を開催しました。
本集会では師岡康子事務局長(外国人人権法連絡会)より、当会が提起している「外国人人権基本法案」と「人種差別撤廃法案」の意義と必要性を報告しました。

 

【参考記事】
「外国人の人権守る基本法を 支援者らが声明」共同通信(2025年11月26日).
「誰もが人間として尊重され差別なく共に生きる社会を――排外主義にNO!院内集会からの提言」Dialogue for People(2025年11月26日).
「排外主義の言動や政策の強まりに反対 外国人支援団体などが都内で声明採択」信濃毎日新聞(2025年11月27日).
「外国人支援団体、共生社会の実現求め声明 差別根絶へ法整備を」神奈川新聞(2025年11月27日).

   

集会には参加者420名(オンライン含む)、国会議員14名の方々にご参加いただきました。
合わせて、8団体連名での声明「排外主義にNO! ~誰もが人間として尊重され 差別なく共に生きる社会を~」を発出しました。
以下、ぜひご覧ください。
※ 同声明は同日に日本政府、各政党本部へ送付いたしました。

   

 


  

【声明】
排外主義に NO!
~誰もが人間として尊重され差別なく共に生きる社会を~

 2025年10月21日、第104代内閣総理大臣に高市早苗氏が指名されました。同日、新総理のもと組閣が行われ、「外国人との秩序ある共生社会担当大臣」が新設されました。担当大臣が新設されたということは、高市内閣において、外国人政策が重点課題の1つであることを示しています。外国人(移民)政策を「建設的に」議論することは、私たちとしても大歓迎です。

 10月24日の所信表明演説では、労働力不足への対応として外国人が必要であることを認めつつも、「一部の外国人による違法行為やルールからの逸脱」に対して、国民が「不安や不公平」を感じているとして、政府の司令塔機能を強化し、毅然と対応すると語っています。けれども、外国人による違法行為やルールからの逸脱に関しても、国民が感じている不安や不公平についても、客観的根拠は示されていません。

 何より「排外主義とは一線を画す」と主張するのであれば、たとえ「一部」と限定したとしても「外国人」という属性を用いるべきではありません。日本人や在日米軍関係者(入管法や入管特例法の枠外にある在日外国人)にも、同様の行為をする人はいます。

 にもかかわらず、「外国人」と名指しすることで、国民の不安を煽り、「秩序」を旗印に、管理・排除の強化に向けた議論が、まるで既定路線であるかのように推し進められています。加えて、社会秩序を損なう「脅威」として、外国人を印象づけることで、当局による管理や排除の徹底への支持を高め、市民が進んで管理・監視に協力する環境を生み出しています。

 11月4日には、従来の「外国人材の受入れ・共生のための関係閣僚会議」(2018年7月24日閣議了解)が改組され、全閣僚による「外国人の受入れ・秩序ある共生社会実現に関する関係閣僚会議」が設置されました。高市総理からの指示により、税金滞納者に対する在留資格審査の厳正な運用、日本国籍取得の厳格化といった「既存のルールの遵守・各種制度の適正化」などが検討されることになっています。今後は、有識者会議での議論を経て、来年1月をめどに「外国人材の受入れ・共生のための総合的対応策」(以下「総合的対応策」)が改訂される予定です。
 
 2018年12月に策定された総合的対応策以降、基本的な考え方として掲げられてきた「日本人と外国人が互いに尊重し、安全・安心に暮らせる共生社会の実現を目指し」、外国人を「社会を構成する一員として受け入れていくという視点に立ち、外国人が日本人と同様に公共サービスを享受し安心して生活することができる環境を全力で整備していく」という姿勢は、どこにいったのでしょうか。

さらに言えば、「骨太の方針 2006」(2006年7月7日閣議決定)でも言及されていた「多文化共生社会」はどうなったのでしょうか。国籍や民族にかかわらず、「日本人」も「外国人」も対等な社会の構成員であるにもかかわらず、「外国人との」と他者化することによって、共生社会を実現する主体は「日本人(国民)」であると主張しようという意図なのでしょうか。

 そもそも、にわかに耳にするようになった「秩序ある共生社会」とは、どのような社会なのでしょうか。

 この言葉は、5月21日、自民党内に設置された特命委員会の名称として使用されて以降、「骨太の方針2026」(2025年6月13日閣議決定)でも、国民の安心・安全のための取組みの1 つとして掲げられています。

 ここで目指されているのは、出入国在留管理庁による「国民の安全・安心のための不法滞在者ゼロプラン」(5月23日)と同様、外国人を日本社会の秩序を乱し、不安を生み出す存在と捉え、不安の原因を除去するために、外国人に対する管理・監視、排除を強化しようとする取組みです。ここには、日本社会の一員として外国人を迎え入れ、共に生きていこうとする姿勢はまったくみられません。

 思い出してください。外国人に対する管理や排除が、どのような不幸を生み出してきたかを。
 
 差別や偏見のなかで出自を隠して生活せざるをえなかった旧植民地出身者らの過酷な生活を。入管収容施設で失われた多くの生命を。人間としての尊厳と権利を奪われた仮放免者の生活を。「難民」と認定されず、迫害を受ける恐れのある国へ送還された難民申請者を。夢を抱き、友人らに囲まれて暮らしていた日本 (ふるさと)から突然追放された子どもや若者たちを。人道的な視点を欠いた当局の「裁量」によって引き離された家族を。

 このような「秩序ある共生社会」を、私たちは決して望んでいませんし、断じて受け入れることはできません。

 今求められるべきは、大きな声に圧し潰されてしまいがちな一人ひとりの存在に目を向け、その「声」に耳を傾けることではないでしょうか。
 
 「ルール」や「秩序」という言葉で、国籍や在留資格、民族や宗教、ジェンダーや年齢によって、人びとの間に壁をつくり、対立させ、分断を煽るのではなく、同じ社会に共に生きる人間として向き合い、いかに人間としての尊厳を尊重し合い、違いを認め合って共に生きていくかを模索し、努力を重ねることが必要なのではないでしょうか。

 属性や能力によって人びとの間に線を引き、「我々」とは異なる存在とみなされる「かれら」に管理・監視の眼差しを向けるような抑圧的な社会ではなく、一人ひとりのありのままを認め合い、権利が保障され、誰ひとり排除されることなく、自らの可能性を実現できる豊かな社会。これこそが、私たちが目指す「共に生きる」社会です。

 私たちは、国に対し、国籍や民族にかかわらず、基本的人権が保障され、社会の一員として尊重される社会を目指す政策をとること、それを法的に保障する外国人・民族的マイノリティの人権基本法を制定することを求めます。また、現実にあふれているヘイトスピーチやヘイトクライム、就職差別や入居差別をなくすための人種差別撤廃法と、それを運用する政府から独立した人権機関の設置を求めます。

 私たちは、改めて排外主義にNOを突きつけ、誰もが人間として尊重され差別なく共に生きる社会の実現に向けて、共に声をあげ、行動することをここに宣言します。

   

2025年11月26日

特定非営利活動法人 移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
「外国人・民族的マイノリティ人権基本法」と「人種差別撤廃法」の制定を求める連絡会
(外国人人権法連絡会)
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)
人種差別撤廃 NGO ネットワーク(ERD ネット)
全国難民弁護団連絡会議(全難連)
一般社団法人 つくろい東京ファンド
一般社団法人 反貧困ネットワーク
フォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム)

    

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clickするとダウンロードできます👉「排外主義に NO!~誰もが人間として尊重され差別なく共に生きる社会を~」(PDF版)

4月23日(土)「2022年総会記念シンポジウム」開催のお知らせ

外国人人権法連絡会の2022年総会の開催に合わせて、記念シンポジウムを開催します。
ぜひご参加下さい。


【2022年外国人人権法連絡会 総会記念シンポジウム】
ヘイトクライムからジェノサイドへの途 ~今こそ人種差別撤廃法の制定を~

日時  :4月23日(土)15:00~17:00
開催形式:オンライン(zoon/ウェビナー)
・お申込みフォーム
https://forms.gle/WYEML7NbgYxZXKhY7
※〆切は4月21日までにお願いします。
※前日(22日)にウェビナーのURLをお送りします。
参加費 :無料
※カンパ歓迎(https://gjhr.net/donation/
主催  :外国人人権法連絡会
連絡先 :info@gjhr.net

◆プログラム◆
①基調講演
「⼈種」的憎悪から⼤量虐殺へ 〜ヘイトスピーチ規制の不可避性〜
・⾦⼦マーティンさん(日本女子大学名誉教授)
②活動報告
ヘイトクライム対策提言と人種差別撤廃法モデル案を中心に
・師岡康子事務局長
シンポジウムコーディネーター
・丹羽雅雄共同代表
 

2022年外国人人権法連絡会総会総会記念シンポジウムチラシ(PDF)

 

《趣旨》
2020年、川崎市「ふれあい館」に在日コリアンの虐殺を宣言する「年賀」ハガキが届きました。同年より新型コロナウイルスが世界中で流行すると、欧米ではアジア系を狙った差別行為が繰り返され、日本国内においても中国人への差別が続出しました。そして、2021年7月には愛知県及び奈良県の民団、8月には京都にある在日コリアンコミュニティ「ウトロ」が放火されるという事件が起きました。
今、日本社会はヘイトスピーチが日常化し、明確なヘイトクライムが続発しながら、それを止める法制がない危険な状態です。
差別の放置、それはジェノサイド(大量虐殺)という極限にまで達する恐れがあることを歴史が語っています。本シンポジウムでは、差別から「ホロコースト」に至った歴史から、なぜ包括的な差別撤廃法が必要なのかについて共に考えていきましょう。

◆講師プロフィール◆
金子マーティンさん
1949年イギリス⽣まれ。1956年初来⽇。オーストリア国籍。⽇本国在留資格:永住者。
⽇本⼥⼦⼤学名誉教授、反差別国際運動事務局次⻑。主な書籍:『神⼾・ユダヤ⼈難⺠1940-1941』(みずのわ出版、2003年)、『ロマ⺠族の起源と⾔語』(解放出版社、2021年)

※嫌がらせやネットでの中傷等を目的とした参加、または差別主義団体関係者の参加は固くお断りします。
※集会の趣旨に反するような言動および行為があった場合、主催者の判断で退席いただくことがあります。
※当日のスクリーンショット含む写真・動画撮影は、主催者以外及び許可を受けた方以外は禁止となります。

外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウム アピール

2018年4月14日に開かれた外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウムで、以下のアピール文が朗読され、参加者一同で確認しました。


外国人人権法連絡会2018年総会記念シンポジウム アピール文

2016年6月にヘイトスピーチ解消法が施行された。同年暮れには、政府による外国人の人権状況に関する調査が実施され、深刻な入居差別や就職差別の実態の一端が明らかとなった。いずれも、日本においては初めて実現したものであり、人種差別撤廃条約が求める締約国の責務を履行するためのささやかな第一歩といえる

しかし、ヘイトデモ・街宣活動は今も全国各地で横行している。公人の差別発言も後を絶たない。2018年2月には、朝鮮総聯中央本部の銃撃という、衝撃的な手段によるヘイトクライムが発生したが、政府はこれを非難する意思を何ら表明しなかった。

いま求められているのは、ヘイトスピーチ解消法の実効化のみならず、人種差別を明確に禁止し、被害者が法的救済を受けることを可能にするとともに、国及び地方自治体が差別を解消するための実効性ある施策を講じるための根拠法となる、人種差別撤廃基本法の制定である。それは、これまで繰り返し人種差別撤廃委員会より勧告されてきたとおり、人種差別撤廃条約の締約国である日本の義務である。

政府はいまだ、立法に消極的な姿勢を変えていない。2017年にも、政府は、日本の人権状況に対する普遍的・定期的審査(UPR)のために国連人権理事会に提出した報告書において、憲法や各種法令により差別を禁止しているなどと従来の立場を繰り返した。2018年3月に採択されたUPRの結果文書では、多数の国から、人種差別を含む差別を禁止する包括的な差別禁止法の制定が勧告されたが、政府は受け入れなかった。本日の講演でも、日本の差別撤廃政策が国際人権水準からかけ離れていることが改めて明らかになった。

この8月に行われる人種差別撤廃委員会による日本審査においても、条約上の義務を履行しているかという観点から、厳しく日本政府の姿勢が問われることになるだろう。

私たちは、マイノリティの権利と尊厳が守られる社会の実現に向けて、次の一歩を進めるため、日本政府と国会に対し、ヘイトスピーチ解消法の実効化及び人種差別撤廃基本法を速やかに制定することを改めて強く求める。

また、これを実現させるために、マイノリティおよび平等を求めるすべての人々と連帯し、市民社会に働きかけ、力強く取り組んでいくことをここに決意する。

2018年4月14日
外国人人権法連絡会2018年総会 記念シンポジウム
「人種差別撤廃基本法を日本で実現させるために」参加者一同

院内集会「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」part6 アピール文

2017年11月2日、参議院議員会館で開催した院内集会「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」part6で、以下のアピール文が朗読され、参加者一同で確認しました。


私たちは国に対し、人種差別撤廃条約に基づきヘイトスピーチをはじめとする人種差別を撤廃する政策を策定すること、その出発点として人種差別撤廃基本法をただちに制定することを求めて、これまで5回の院内集会を開いてきた。

昨年2016年4月に与党から出され、6月3日に施行された「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」(ヘイトスピーチ解消法)は、人種差別撤廃基本法ではなく、在日外国人へのヘイトスピーチに限定し、禁止規定もない不十分な内容ではあるが、それでも長年の国際人権基準に合致する反人種差別法を求める闘い抜きでは実現し得なかった成果であり、私たちはこの法律を差別撤廃のために活用し、また、次の法整備につなげることを誓った。

ヘイトスピーチ解消法施行から1年半、ヘイトデモの回数、参加者数は減少し、警察のカウンターを敵視する態度はある程度是正されるなど、一定の効果は出ている。しかし、届出不要のヘイト街宣の回数は減らず、ネット上のヘイトスピーチに対してほぼ野放し状態であり、公人によるヘイトスピーチは悪化している。

国がヘイトスピーチ解消のために、解消法に基づいてやるべきことは、個別具体的なヘイトスピーチに対し即座に首相や法務大臣が公的に批判すること、プロバイダーが自主的ルールを忠実に実施してヘイトスピーチを迅速に削除するよう合意を取り付けること、学校教育において反ヘイト教育をカリキュラムに入れること、全警察官に研修を行うことなど、多方面にわたってある。私たちは、そのような具体的な要求をもって国と交渉してきたが、まだ多くが実現していない。

もとより、解消法はヘイトスピーチのみを対象とする点で限界がある。ヘイトスピーチは差別の一角であり、入居差別、就職差別などの差別的取扱いと一体としてマイノリティを苦しめており、社会的構造的な人種差別を撤廃することがその根絶のため不可欠である。それが人種差別撤廃条約の締約国としての義務でもある。

すでに今年3月に発表された法務省の「外国人住民調査報告書」により、外国籍住民に対する深刻な人種差別の全体像が明らかになっており、差別撤廃のためにはる啓発、教育だけでは足りず、法的に禁止することが不可欠である。

さらに、ヘイトスピーチ解消法は在日外国人のみを対象としているが、アイヌ、琉球・沖縄、被差別部落など、人種差別全体に取り組むことが国際的責務である。

しかし政府は、今年人種差別撤廃委員会に提出した報告書の中で、「包括差別禁止法が必要であるとの認識には至っていない」と述べ、また、国際人権高等弁務官事務所に提出した報告書の中でヘイトスピーチへの規制強化について不必要との認識を示している。

以上から、私たちは、国および地方自治体に対し、共通の課題として、ヘイトスピーチ解消法を実効化し、さらに、国際人権法上の義務に合致した人種差別撤廃政策と法整備を速やかに整備するよう、下記のことを求める。

  1. 政府は、ヘイトスピーチ解消のための基本方針、基本計画を速やかにたて、総合的に政府全体で対策を進めること。
  2. 関係各省庁はヘイトスピーチ解消法に基づき、ヘイトスピーチ解消のため実効ある施策を直ちに実行すること。
  3. 地方自治体は、ヘイトスピーチ解消法を実効化するため、人種差別撤廃条例制定などを速やかに進めること。
  4. 国は、ヘイトスピーチを含む人種差別全体の撤廃を総合的に進めるため、直ちに人種差別撤廃基本法を制定すること。
  5. 国は、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに、国際人権基準に合致する人種差別禁止法、個人通報制度、国内人権機関など人種差別撤廃法制度を整備すること。

2017年11月2日

「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」第6回院内集会 集会参加者一同
外国人人権法連絡会
移住者と連帯する全国ネットワーク
人種差別撤廃NGOネットワーク
のりこえねっと
ヒューマンライツ・ナウ

ヘイトスピーチ解消法施行1年集会アピール

2017年6月3日に開催した集会「ヘイトスピーチ解消法施行1年 ~その現状と課題、人種差別撤廃基本法の実現へ」で、以下のアピール文が提起され、採択されました。


差別に苦しむマイノリティと、共に差別と闘う人々は、長年、国際人権基準に合致する人種差別撤廃法制度を求めてきた。1年前に成立・施行されたヘイトスピーチ解消法(「本邦外出身者に 対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」)は、これまで深刻な人種差別の存在自体を否定してきた国が、はじめてその被害を認め、緊急な課題として解消に取り組むことを宣言した反人種差別法であった。人種差別の中の在日外国人に対するヘイトスピーチに限定し、かつ、禁止事項もない理念法という大変不十分な内容ではあるが、それでも長年の闘い抜きでは実現し得なかった成果であり、私たちはこの法律を差別撤廃のために活用し、また、次の法整備につなげることを誓った。

成立から1年、ヘイトデモに対し警察がヘイトスピーチをしないようアナウンスし、川崎桜本と大阪鶴橋でデモ禁止の仮処分が出るなどした結果、ヘイトデモの回数、参加者数は減少した。警察のカウンターを敵視する態度はある程度是正された。しかし、届出不要のヘイト街宣の回数は減っていない。また、ネット上のヘイトスピーチに対しては法務省人権擁護局が被害者の申立てによりプロバイダーに何度も削除要請し、一部削除されたが、全体的には野放し状態である。
国がヘイトスピーチ解消のために、解消法に基づいてやるべきこと、できることは、選挙活動を悪用するなど悪質なヘイトスピーチがなされた場合、個別具体的なヘイトスピーチに対し即座に首相や法務大臣が公的に批判すること、プロバイダーが自主的ルールを忠実に実施してヘイトスピーチを迅速に削除するよう合意を取り付けること、学校教育において反ヘイト教育をカリキュラムに入れること、全警察官に研修を行うことなど、多方面にわたってある。私たちは、そのような具体的な要求をもって国と交渉してきたが、まだ多くが実現していない。
他方、川崎市、京都府、名古屋市などいくつもの地方自治体は、解消法成立を契機に公共施設の利用制限や条例化など実効性ある取り組みを進めている。ほかの地方自治体や国の取り組みを促す意義も大きい。しかし、日弁連の調査結果にも見られるように、大半の地方自治体はまだ様子見にとどまっている。
もとより、同法はヘイトスピーチのみを対象とする点で限界がある。今年3月に発表された法務省の「外国人住民調査報告書」でも在日外国人の4割が入居差別を経験するなど深刻な差別の実態がある。また、人種差別撤廃委員会などから何度も指摘されているように、高校無償化制度からの朝鮮学校の排除、地方自治体による補助金カットなど、国や地方自治体による公的な差別が、深刻な差別を悪化させている。

以上から、私たちは、国および地方自治体に対し、共通の課題として、ヘイトスピーチ解消法を実効化し、さらに、国際人権法上の義務に合致した人種差別撤廃政策と法整備を速やかに整備するよう、下記のことを求める。

  1. 政府は、ヘイトスピーチ解消のための速やかに基本方針、基本計画をたて、総合的に政府全体で対策を進めること。
  2. 関係各省庁はヘイトスピーチ解消法に基づき、ネット対策、個別具体的なヘイトスピーチへの公的な批判など、ヘイトスピーチ解消のため実効ある施策を直ちに実行すること。
  3. 地方自治体は、ヘイトスピーチ解消法を実効化するため、人種差別撤廃条例制定などを速やかに進めること
  4. 国は、ヘイトスピーチを含む人種差別全体の撤廃を総合的に進めるため、直ちに人種差別撤廃基本法を制定すること。
  5. 国および地方自治体は、国連人権理事会、人種差別撤廃委員会などの勧告を真摯に受け止め、公的な差別を直ちに改めること
  6. 国は、2020年のオリンピック・パラリンピックまでに、国際人権基準に合致する人種差別禁止法、個人通報制度、国内人権機関など人種差別撤廃法制度を整備すること。

2017年6月3日
「ヘイトスピーチ解消法施行1年」集会参加者一同
外国人人権法連絡会、移住者と連帯する全国ネットワーク、人種差別撤廃ネットワーク、のりこえねっと、ヒューマンライツナウ

「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」4・19院内集会アピール

私たちは国に対し、人種差別撤廃条約に基づきヘイトスピーチをはじめとする人種差別を撤廃する政策を策定すること、その出発点として人種差別撤廃基本法をただちに制定することを求めて、昨年来、4回の院内集会を開いてきた。昨年5月に提出された野党の「人種等の差別の撤廃に関する施策の推進に関する法案」は、基本法案として大きな意義を有している。

他方、今回提出された与党の「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律案」は、反差別法ではあるものの、対象を外国出身者、かつヘイトスピーチ対策に限定した内容である。

それでも、日常的にマイノリティに対する虐殺さえ煽るヘイトスピーチが蔓延し、ヘイトクライムが各地で起きている今、ヘイトスピーチ対策法を作る緊急性は大きい。

私たちは、人種差別撤廃条約上の義務の履行として、かつ、人種差別撤廃基本法の制定に向けたステップとして、今国会でまずヘイトスピーチ対策法を成立させることを求める。

ただし、与党法案は、対象を外国出身者、なかでも「適法に居住するもの」に保護の対象を限定しており、非正規滞在者への差別的言動にお墨付を与える点は、人種差別撤廃条約に違反するものであり、私たちはとうてい認めることはできない。

その削除を不可欠とした上で、人種差別撤廃条約の理念に基づく実効性ある法にするため、最低限、下記の是正を求める。

  1. 法目的に「人種差別撤廃条約の理念」との文言をいれる。
  2. 差別的言動の禁止条項をいれる。
  3. 「差別的言動」の定義については、
    ・対象を、条約の文言通り「人種、皮膚の色、世系又は民族的若しくは種族的出身」にする。
    ・「著しく侮蔑する」場合も含める。
    ・「地域社会」からの排除に限定せず、「社会」からの排除にする。
  4. 地方公共団体の責務を、努力義務ではなく、国と同じ責務とする。
  5. 定期的な差別の実態調査を行う。
  6. 被害者の意見を聴く条項をいれる。
  7. インターネット対策を入れる。
  8. 人種差別撤廃教育の対象として、公務員、特に警察を明記する。
  9. 差別撤廃の取り組みを検証し推進する審議会を設置する。

私たちは日本に住み暮らすすべての人びとの総意として、上記の点を踏まえたヘイトスピーチ対策法を実現するよう、立法府に求める。

2016年4月19日
「今こそ人種差別撤廃基本法の実現を」院内集会 参加者一同