2023年7月18日、外国人人権法連絡会は国際的な障害当事者団体の「DPI日本会議」および「移住者と連帯する全国ネットワーク」と共に、本村賢太郎相模原市長に対して「『(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定につい(答申)』を正確に反映させた反差別条例の実現を求める共同要請」を行ないました。

神奈川県相模原市では、2023年度中に「(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例」の制定が予定されています。
これまで条例に盛り込むべき内容について人権施策審議会での議論が続いてきましたが、2023年3月23日に審議会からヘイトスピーチ規制を含め、国内では極めて先進/画期的な内容が提起/記載された「答申」が本村市長に提出されました。

※「答申」は以下リンク(相模原市のHP)からダウンロードできます。
(仮称)相模原市人権尊重のまちづくり条例の制定について(答申)

この「答申」の支持表明と実際の条例化を求めるため、相模原市(長)に要請をしました。

要請には田中宏共同代表と師岡康子事務局長、DPIから佐藤聡事務局長、移住連の鳥井一平共同代表理事が出席しました。
当会からは「相模原市人権施策審議会答申を反映させた反差別条例の制定を求める要望書」を提出しました。本要望書には、移住者と連帯する全国ネットワーク/反差別国際運動(IMADR)/人種差別撤廃NGOネットワーク/外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会/コリアNGOセンター/国内人権機関と選択議定書の実現のための人権共同行動/ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワークも共同提出団体となっています。

要望書は「答申」について「今こそ求められている包括的な実効性ある差別禁止法制度の出発点となる優れたもの」として評価した上で、5つのポイントを上げています。

  1. 「津久井やまゆり園事件」を「ヘイトクライム」(差別的動機に基づく犯罪)と位置づけ、前文にそれに対する非難を明記すること。
  2. 悪質な差別的言動を禁止し、勧告、命令を経ても止めない場合、氏名を公表し、秩序罰(過料)又は行政刑罰(罰金等)を科すこと。
  3. 2の事由を人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身とすること
  4. 差別事案が発生した場合、市長は速やかに非難声明を出すこと。
  5. 定の独立性を有する専門的な第三者機関として「相模原市人権委員会」を設置し、被害者救済のための調査や説示のほか、行政に対するチェック機能を持たせること。


師岡事務局長からは、はじめに、日本で初めて差別を犯罪とした川崎ではヘイトスピーチ規制条例の制定によって、明らかなヘイトスピーチが行なわれなくなった状況を報告しました。その上で、この答申は、本村市長が2019年に川崎市の条例以上の条例をめざすと宣言したことに応えるものであり、ヘイトスピーチ規制の対象を外国ルーツの人だけに限らず、障害や性的指向/性自認にも広げた大変画期的なものであると述べました。現在、性的マイノリティを公表している弁護士や障害者の方に酷い脅迫が行なわれている状況があること、ヘイトスピーチ・ヘイトクライムは外国ルーツに限らない日本の共通の問題であり、本答申は他の地域の模範となる「相模原モデル」と呼べるものであると強調しました。また、救済の点が弱い川崎の条例と比較して、明確に被害救済を目的とした第三者機関(※注:「相模原人権委員会」)を作ると記載されていることについて、「禁止規定や罰則規定があるだけでは被害者にとっては『絵に描いた餅』になってしまう危険性があるが、そこまでフォローされている素晴らしい内容であり、ぜひこの内容を盛り込んだ条例を作って頂きたく、今日伺った次第です」と要請しました。

田中共同代表は(『広報 相模原』[2023年7月15日/1509号]に市長が人権条例の制定に取り組み「差別や偏見のないまちづくりを進めております」と記述していることを読んで)、「決意表明をされており、大変期待しています」「人権委員会、第三者機関はとても大事」「ぜひ実行して欲しい」と求めました。

鳥井移住連共同代表理事は、まず(自分は)2015年から相模原市の建設会社で働いていることを紹介しました。会社では多くの外国人労働者が勤務しており、そうした状況の中で、このような条例を制定しようという相模原市の動きについて「これは外国籍住民だけ、外国人労働者だけではなく、全ての市民にとって、人権が尊重される」「私たちは色々な場所で言っているが、多民族多文化共生は地域から始まっている。このことを相模原市が率先して、まず行政として何をすることができるのか、進んで頂くことが非常にありがたい」「2015年以降、働いている私たちとしては誇りに思う」と強い期待を表明しました。

※佐藤DPI事務局長の発言内容は同団体のHPを参照してください。


最後、要請を受けた本村市長は「答申に関しまして、ご評価頂いて大変ありがとうございます」「この答申をベースに条例案を作っていきたい」「今年度中に議会に提案したい」「人権尊重のまちづくり条例、72万市民誰一人取り残さないという視点の中ですね、一人ひとりがかけがえのない方々ですから、尊重されて、かつお互いの人権を認め合うような共生社会の実現を目指していきたい」「やまゆりの事件っていうのは本当に私たちにとっても、今年7年目を今月迎えて、26日の日にですかね、また追悼集会がありますが、私ももちろん参加をしてまいりますけども、ああいった事件を風化させることなくやっていかなければならないという思いがありますので、みなさまに条例提案をしっかりお示しできるように庁内で進めているところ」「外国人市民も、鳥居井さんが言って頂きましたが、1万7千人市内にいらっしゃいます。非常に貴重なお一人お一人の市民だと思ってますので、ぜひそういったみなさんが暮らしやすいようにしていかないといけないと思っています」「国籍とか性自認とかですね、年齢とか関係なくみんながお互いを認め合って一緒に生活ができるような環境を作っていかなければいけないなと思っていますので、そのための条例を作っていきたいと思います」と述べました。

相模原人権施策審議会が提出した「答申」は川崎の条例を越えることはもちろん、日本全体の人権施策を前に進めることが期待できるものです。近年、国内でもインターセクショナリティ[intersectionality](交差性)が注目されるようになってきました。今回、当会のような外国人・民族的マイノリティの問題を主な課題としている団体と障害当事者団体のDPI日本会議が共同要請を行なったという事実は、「答申」が現代的な人権課題を見据えたものであることを物語っています。
改めて、この画期的な「答申」を反映させた反差別条例の制定を本村市長に期待します。



2023年7月18日

相模原市長 本村賢太郎 様

相模原市人権施策審議会答申を反映させた反差別条例の制定を求める要望書


外国人人権法連絡会
共同代表 田中宏・丹羽雅雄

《共同提出》
移住者と連帯する全国ネットワーク
反差別国際運動(IMADR)
人種差別撤廃NGOネットワーク
外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会
コリアNGOセンター
国内人権機関と選択議定書の実現のための人権共同行動
ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク

以上

2023年3月、相模原市人権施策審議会は、相模原市人権尊重のまちづくり条例について答申を出しました。その内容のうち、下記の点が特に重要です。

  1. 「津久井やまゆり園事件」を「ヘイトクライム」(差別的動機に基づく犯罪)と位置づけ、前文にそれに対する非難を明記すること。
  2. 悪質な差別的言動を禁止し、勧告、命令を経ても止めない場合、氏名を公表し、秩序罰(過料)又は行政刑罰(罰金等)を科すこと。
  3. 2の事由を人種、民族、国籍、障害、性的指向、性自認、出身とすること
  4. 差別事案が発生した場合、市長は速やかに非難声明を出すこと。
  5. 一定の独立性を有する専門的な第三者機関として「相模原市人権委員会」を設置し、被害者救済のための調査や説示のほか、行政に対するチェック機能を持たせること。

まず、戦後最悪のヘイトクライム事件である「津久井やまゆり園事件」(2016年)を差別と認定し、条例で公的に非難することは、被害者救済の観点をはじめ、今後のヘイトクライム抑止のためにも大きな意義があります。日本の法制度上はじめて「ヘイトクライム」との文言が入ることにより、国全体のヘイトクライム対策を進める契機ともなるでしょう。

次に、悪質な差別的言動(ヘイトスピーチ)を禁止し、処罰することは、日本が加盟する人種差別撤廃条約及び自由権規約で求められている義務ですが、現在、日本で公的機関が罰則付きの差別禁止条項を規定しているのは、「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」(2019年)のみです。同条例の成立により、川崎市内では罰則付き禁止条項に違反する言動がほぼなくなる、という明確な効果が出ています。相模原市でも条例が実現すれば、川崎市の条例以降では初めてのことです。これは全国に広がる大きな推進力となり、川崎市を支える力ともなります。

さらに、川崎市の条例よりも禁止・処罰の対象範囲を拡大している点が画期的です。これは、国連が2022年末に発表した「包括的差別禁止法策定実践ガイド」にも沿うものといえます。また、同年、自由権規約委員会は日本に対する総括所見で「性的指向及び性自認といった理由を含む規約上の全ての禁止理由に基づく・・ヘイトスピーチを明示的に犯罪化するため」の刑法改正を検討するよう勧告していますが、これとも合致します。

差別事案が生じたときに市長が非難声明を出すことは、差別拡大を防止する効果があります。条例で声明を義務付けることにより、そのときどきの市長の判断に左右されないで実効性を確保する意義があります。やまゆり園事件では、事件の直後から、インターネット上で、犯行を賞賛するコメントや、「犯人は在日」「中国人」であるなどの差別デマが大量に拡散され、マイノリティ市民は恐怖にさらされました。欧米を中心に多くの国では、首相や首長が速やかに差別を非難する声明を出すことが当たり前となっています。ですが、日本ではやまゆり園事件ですら、当時の首相や市長は差別として非難しませんでした。この点、2022年成立の三重県の条例「差別を解消し、人権が尊重される三重をつくる条例」における、災害時における人権侵害行為を助長する風説の流布への対策を県に義務付ける条項(第24条)が先進事例ですが、今回の答申はそれを差別事案全体に拡大した点で、画期的です。 

最後に、「相模原市人権委員会」は、被害救済などのための委員会で、差別・人権問題の専門家で構成するとされています。この委員会は、市から一定の独立性をもち、また、諮問がなくとも非難声明発表を市長に対して建議することができるなど、条例の実効性を確保するための重要な権能を認められています。被害回復のために、被害者自身が裁判を起こすような重い負担を強いられている現状を考えれば、人権委員会に迅速で効果的な救済を求めることができるとする点は大変重要です。2022年の自由権規約委員会の勧告など、日本は国際人権条約監視機関から何度も、独立性のある国内人権機関の設置を求められています。この人権委員会はそのような国際的要請に合致するものです。

以上のように、今回の答申は、外国ルーツの人々に対するヘイトスピーチ、ヘイトクライムの蔓延のみならず、障害者や性的マイノリティに対する攻撃も止まらぬ中で、今こそ求められている包括的な実効性ある差別禁止法制度の出発点となる優れたものです。現在の日本の最高峰の川崎市の反差別条例をさらに進める、「相模原モデル」ともいえる画期的な内容となっています。
本答申を条例が実現すれば、全国で「相模原モデル」の条例が広がり、さらに、国での包括的差別禁止法制定への大きなステップとなるでしょう。国際的に遅れている日本の閉塞的な人権状況を切り開く力となります。
以上より、私たちは、本答申を支持し、本村市長がぜひこの答申、とりわけて上記の5点を具体化する条例案を策定するよう、強く要望します。

以上

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