カテゴリー: 声明

【活動報告】「相模原市人権尊重のまちづくり条例(案)の骨子」に対する共同要請」(2023年12月8日)

 

 

 2023年12月8日、外国人人権法連絡会は、「移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)」と共に「相模原市人権施策審議会答申をほぼ無視した条例素案に抗議し、改めて答申に基づく条例制定を強く求める要請書」を公表しました(要請内容は以下を参照)。

 また、同日には相模原市役所「ウェルネスさがみはら」にて移住連、国際的な障害当事者団体の「DPI日本会議」と共に「『相模原市人権尊重のまちづくり条例(案)の骨子』に対する共同要請」を行ないました。
 本要請には当会の師岡康子事・務局長、移住連は鳥井一平・共同代表理事、DPI日本会議からは白井誠一朗・事務局次長が参加しました。市側は条例担当の局長と部長含め計4名でした。

(さらに…)

【活動報告】2022年10月18日(火)法務省にヘイトクライム対策を求める要請行動等のご報告

最近の日朝関係の悪化を契機として朝鮮学校の子どもたちをはじめとする在日コリアンへのヘイトスピーチ、ヘイトクライムが悪化しました。
そこで、外国人人権法連絡会が10月6日付で「国等に対し緊急に在日コリアンに対するヘイトクライムを止める具体的行動を求める声明」を発出しました。
また、13日までに団体賛同を募ったところ、1週間で計226もの団体からご賛同を頂きました。

10月18日、朝鮮学校関係者や支援者の方々と共に法務省に面談し、田中宏共同代表から、佐藤淳一人権擁護局人権擁護推進室長に声明・賛同団体リストなどを渡しました。
朝鮮学校関係者からは、学校や生徒たちに差別的な攻撃が続いており、10月8日正午までに確認できただけで東京、神戸、長野、四日市、四国、九州)など全国6校に対し、9件の暴行、脅迫事件があったこと、また9月には東京朝鮮中高級学校の生徒が通学路のJR赤羽駅で発見した差別落書き事件の状況や被害が報告されました。 (さらに…)

【緊急声明】2022年10月6日(木)「国等に対し緊急に在日コリアンに対するヘイトクライムを止める具体的行動を求める声明」の公表と賛同団体のお願い

最近のミサイル発射事件を契機に、インターネット上には朝鮮学校への攻撃的なコメントが溢れています。
これまでも外交関係悪化の度に、何ら責任のない朝鮮学校の子どもたちがヘイトスピーチ/ヘイトクライムの対象となってきました。
まして、この間には民族学校への放火などヘイトクライムが相次ぎました。
先日も9月30日に、JR赤羽駅での差別落書きが発見されています。
差別を放置すれば、エスカレートし、より危険な状態を生み出します。

この事態を憂慮し、当会は「国等に対し緊急に在日コリアンに対するヘイトクライムを止める具体的行動を求める声明」を発表しました。
※以下の画像をクリックすると声明文がDLできます。

 

 

合わせて、本声明への賛同団体を募っています。
◆賛同団体申し込みフォーム
https://docs.google.com/forms/d/e/1FAIpQLSduE2L4d00WeTWnuMqYgtGaLSgxWGugLSihNmesnsAAwFhWKw/viewform?usp=sf_link
※〆切:10月13日(木)18時00時まで

頻発するヘイトクライムを止めるためには、国及び地方公共団体による具体的な行動/施策が求められます。
そして何よりも、実現のためには、私たち一人一人が声をあげることが必要です。
当声明への賛同と拡散を、よろしくお願い致します。

 

「ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明」への団体賛同のお願い

京都府宇治市ウトロ地区への放火事件を受け、当会は12月21日付でウトロの人々との連帯の意思を示す声明を発表しました。

※声明は下記リンクよりご覧になれます。
ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明

現在、本声明への賛同団体を募っております。
賛同団体については、12月26日に開催される集会「ウトロでの放火事件を許さない!――ヘイトクライムのない社会をめざす市民集会」で報告する予定です。

※集会の詳細とお申込みはこちらから
ウトロでの放火事件を許さない! ヘイトクライムのない社会をめざす市民集会
ぜひご賛同ください。
よろしくお願い致します。


〈賛同方法〉
お申し込みはこちらから
「ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明」への団体賛同フォーム

〆切:2021年12月24日まで


 

「ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明」賛同団体

 

賛同数:160団体
(2021年1月14日 20:00時点)

◆団体名(順不同)
樹花舎/三一書房/ノーヘイト武蔵野/NOHATE風を届け隊/東アジアの鉱山史を記録する会/茨城県議会議員 玉造順一後援会/平和と民主主義をめざす全国交歓会・滋賀/NPO法人共生フォーラムひろしま/朝鮮学校とともに・練馬の会/NPO法人 香川人権研究所/エルクラノの会/TQC 東京給水クルー/在日韓国人問題研究所(RAIK)/外国人住民基本法の制定を求める全国キリスト教連絡協議会(外キ協)/市民フォーラム・よの/枝川朝鮮学校支援都民基金/沖縄の基地を考える会・札幌/反差別相模原市民ネットワーク/平和と民主主義をともにつくる会・東京/多文化共生フォーラム奈良/人権ネットワーク・東京/部落解放同盟東京都連合会/KimoonFilm/反差別国際運動(IMADR)/幼保無償化を考える東村山の会/関西合同労働組合/在日本朝鮮人人権協会/「ハムケ・共に」/さっぽろ自由学校「遊」/札幌市に人種差別撤廃条例をつくる市民会議/アイヌ政策検討市民会議/北海道NGOネットワーク協議会/市民社会スペースNGOアクションネットワーク(NANCiS)/I女性会議/在日外国人に参政権を No Hate Yes Vote/ヘイトスピーチを許さないかわさき市民ネットワーク/全国在日外国人教育研究協議会/部落解放同盟京都府連合会/外国人学校・民族学校の制度的保障を実現するネットワーク埼玉/朝鮮学校生徒を守るリボンの会/朝鮮・韓国の女性と連帯する埼玉の会/日朝友好女性ネットワーク/部落解放同盟香川県連合会/曽根九条の会/キリスト者九条の会/「イラク判決を活かす会」/アイ女性会議・京都/沖縄のたたかいと連帯する東京南部の会/人種差別撤廃NGOネットワーク(ERDネット)/人権の21世紀をつくる文化の集い実行委員会/多摩川太鼓/「憲法」を愛する女性ネット/戦争をさせない1000人委員会・しが/関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会/一般社団法人ほうせんか/関東大震災朝鮮人虐殺の国家責任を問う会/日本軍「慰安婦」問題の解決をめざす北海道の会/世界へ未来へ 連絡会(9条連)―近畿地方連絡会/なかまユニオン/「高暮ダム強制連行の歴史を継承する会」/ききょうの会/(特活)コリアNGOセンター/神奈川ネットワーク運動・宮前/マイノリティ宣教センター/国際結婚を考える会(JAIF)/沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック/ZENKO京都/部落解放同盟国立支部/差別・排外主義に反対する連絡会/沖縄カウンターズ/長生炭鉱の水非常を歴史に刻む会/全国キリスト教学校人権教育研究協議会/全国在日外国人教育研究協議会広島/日本軍「慰安婦」問題解決ひろしまネットワーク/<ノーモア南京>名古屋の会/河村市長「南京虐殺否定」発言を撤廃させる会/アプロ・未来を創造する在日コリアン女性ネットワーク/神奈川ネットワーク運動 磯子市民ネット/外国人基本法の制定を求める神奈川キリスト者連絡会(神奈川外キ連)/表現の不自由展・東京実行委員会/ストップ秘密保護法かながわ/第九条の会ヒロシマ/株式会社銀座No!Hate小店/川崎駅前読書会/日本基督教団京都教区「教会と社会」特設委員会/カトリック札幌教区正義と平和協議会/一般社団法人・自由ジャーナリストクラブ/多文化共生フォーラム奈良/神奈川ネットワーク運動・藤沢/アクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(wam)/NPO法人「猪飼野セッパラム文庫」/ヘイトスピーチと排外主義に加担しない出版関係者の会/部落解放同盟東京都連荒川支部/日本YWCA/神奈川ネットワーク運動・大和市民会議/ふぇみん婦人民主クラブ/かながわ平和憲法を守る会/神奈川ネットワーク運動・座間市民ネット/川崎から日本軍「慰安婦」問題の解決を求める市民の会/女性参政権を活かす会/日本聖公会東京教区人権委員会/日本基督教団神奈川教区社会委員会ヤスクニ・天皇制問題小委員会/愛知県に実効性ある人権条例制定を目指す弁護士の会/日本聖公会/名古屋三菱朝鮮女子勤労挺身隊訴訟を支援する会/神奈川ネットワーク運動・鎌倉/かなかわみんとうれん/在日コリアン弁護士協会(LAZAK)/沖縄の映画を観よう!かわさき/日本キリスト教会 人権委員会/日本キリスト教協議会 東アジアの和解と平和委員会/日本キリスト教協議会/神奈川ネットワーク運動・平塚/日本キリスト教協議会在日外国人の人権委員会/NPO法人 移住者と連帯する全国ネットワーク/関東大震災中国人受難者を追悼する会/アジア女性資料センター/日本聖公会日韓協働委員会/社会科学研究会ピース・ナビ/日本基督教団部落解放センター/民族教育ネットワーク/外国人住民との共生を実現する広島キリスト者連絡協議会/NCC部落差別問題委員会/反戦老人クラブ・京都/子どもと教科書 市民・保護者の会/川崎市政に参加する会/不戦へのネットワーク/No Hate Setouchi/「表現の不自由展・その後」をつなげる愛知の会/フェアビジョン編集局/「広島市差別のない人権尊重のまちづくり条例」制定を求めるネットワーク/全国在日外国人教育研究協議会/教科書問題を考える市民ネットワーク・ひろしま/兵庫在日韓国朝鮮人教育を考える会/神奈川ネットワーク運動・さがみはら/広島宗教者平和協議会/一般社団法人神奈川人権センター/一般財団法人アジア・太平洋人権情報センター(ヒューライツ大阪)/「慰安婦」問題を考える市民の会・相模原/79 ‘おんな達から/子どもに教育への権利を!大阪教育研究会/日本基督教団西中国教区宣教委員会社会部/#FREEUSHIKU/リブ・イン・ピース☆9+25/在日韓国民団中央本部 人権擁護委員会/学校事務職員労働組合神奈川/ATTAC Japan(首都圏)/岡まさはる記念長崎平和資料館/「バスストップから基地ストップ」の会/「日の丸・君が代」の法制化と強制に反対する神奈川の会/全国学校事務労働組合連絡会議/のりこえねっと/日本バプテスト連盟日韓・在日連帯特別委員会/部落解放同盟坂出市連絡協議会/東九条まちづくりサポートセンターまめもやし/無償化連絡会・大阪/朝鮮学校「無償化」排除に反対する連絡会/岐阜朝鮮初中級学校の子どもたちを支援するポラムの会/民族教育の未来をともにつくるネットワーク愛知(ととりの会)/KOREAこどもキャンペーン

ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明

2021年8月30日、京都府宇治市ウトロ地区で放火事件が起きました。
本事件は、在日コリアンに対する差別を背景としたヘイトクライムである可能性が極めて高いと言えます。
マイノリティを恐怖に陥れ、社会に差別と暴力が蔓延しつつある深刻な状況です。
住む家も歴史的な貴重な資料も破壊されたウトロの人々との連帯、そして、ヘイトクライム根絶のために共に闘うことを呼びかけます。
連帯の意思を示すため、外国人人権法連絡会は「ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明」を発表しました。
ご一読ください。



ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明

2021年12月21日

今年8月30日、京都府宇治市のウトロ地区で、住宅や倉庫など計7棟が焼け、12月6日、京都府警は放火の疑いで22歳男性を非現住建造物放火罪(刑法109条)で逮捕したことを発表しました。被疑者は7月、名古屋市の韓国民団愛知県本部と隣の名古屋韓国学校の排水管に火を付けて壊し、器物損壊罪(刑法261条)で10月に逮捕・起訴されています。

ウトロ地区で放火されたのは住宅地であり、死者が出る危険性もありました。来年4月には地域の歴史を伝える平和祈念館が開館する予定で、その記念館に展示するための資料などおよそ40点も焼失したとのことです。

ウトロ地区は、日本軍の戦争遂行のための京都飛行場建設工事現場に朝鮮の人々が集められたのを契機として形成された集住地区で、住民は植民地支配の歴史の生き証人です。今回の放火は、戦後も差別の下、苦難の生活を強いられてきた人々に対し、生活の基盤のみならずその苦難の歴史の証拠をも破壊し、踏みにじるもので、到底許すことはできません。

一連の犯罪のターゲットとなっているのがすべて在日コリアン関連施設であり、被疑者は「日本人の注目を集めたくて火をつけた」などと述べているとの報道を踏まえれば、「日本人」集団に向けたメッセージとしてコリアンを攻撃しており、差別に基づく犯罪すなわちヘイトクライムの可能性が極めて高いといえます。コリアンであることだけを理由として、日本に存在することそのものを否定したヘイトクライムの危険性が強く疑われます。

ヘイトクライムの本質は、歴史的、構造的に差別されてきた属性を有する人々に対する迫害であり、その被害は直接攻撃された人のみならず、その属性を有する人々を日常的な恐怖、屈辱感、絶望感に陥れます。また、社会にその属性をもつ人々を差別し攻撃して構わないとの雰囲気が醸成され、暴力や排除、さらにはジェノサイドへもつながり、民主主義社会を破壊します。その危険性故に、日本も加盟している人種差別撤廃条約は加盟国にヘイトクライムを犯罪として処罰する義務を課しています。

今回の一連の放火事件は既に全国の在日コリアンに、いつ家や施設が放火されるかもしれないとの恐怖をもたらしています。今回の事件に煽られたと思われる大阪府の韓国民団枚岡支部へハンマーが投げ込まれた事件も報道されており、極めて深刻な状況です。

まず、今回の事件について、京都府警及び京都地検に対し、差別に基づくものであるか徹底的に捜査し明らかにすること、ヘイトクライムであった場合には、その重大性に相応しく厳正に起訴及び求刑を行うことを求めます。また、内閣総理大臣、法務大臣、京都府及び宇治市の首長、議員らが直ちにウトロを訪れ、住民の被害を聞き、被害を放置しないこと、ヘイトクライムの危険性が高く決して許さないと宣言することを求めます。そのような行動が人種差別撤廃条約の定める責務にかなうものです。そして、ヘイトクライム対策を含む人種差別撤廃政策及び法整備を緊急に行うことを求めます。

私たちは、ウトロの人々を孤立させず、被害回復及び再発防止に向け、また、ヘイトクライムの根絶のため共に闘うことを全国の皆さんに呼びかけます。

※声明のPDF版はこちらからダウンロード可
ウトロの人々と連帯しヘイトクライム根絶をめざす声明

入管被収容者の死亡事件の政府調査報告書に対する抗議声明

3月に名古屋入管で起きたウィシュマ・サンダマリさんの死亡事件について、出入国在留管理庁は8月10日、調査報告書を発表しました。
それに対して、当連絡会、恣意的拘禁ネットワーク(NAAD)、移住者と連帯する全国ネットワーク(移住連)、ヒューマンライツ・ナウ(HRN)の4団体で緊急記者会見を、2021年8月17日(火)14時より、参院議員会館で開きました。
その際に当会と、NAAD、HRNの3団体で共同の抗議声明を発表しました。

 


入管被収容者の死亡事件の政府調査報告書に対する抗議声明
~そもそもウィシュマ氏の収容は「法」に則っていたのか~

2021年8月17日

恣意的拘禁ネットワーク(NAAD)
認定NPO法人ヒューマンライツ・ナウ
外国人人権法連絡会

第1 問題の所在(特に憲法及び国際人権法違反)

1 2021年8月10日、出入国在留管理庁は、同年3月6日に名古屋出入国在留管理局の収容施設に収容されていたスリランカ国籍の女性ウィシュマ・サンダマリ氏(以下、「ウィシュマ氏」)が死亡した事件(以下、「本件死亡事件」)について、調査報告書(以下、「本件調査報告書」)を公表した[1]

本件調査報告書において、出入国在留管理庁は、改善策として、「全職員の意識改革」「被収容者の健康状態に関する情報を的確に把握・共有し、医療的対応を行うための組織体制の改革」「医療体制の強化」「被収容者の健康状態を踏まえた仮放免判断の適正化」「その他の改善策(情報提供窓口の設置等)」をあげている。

2 しかし、上記改善策が示すとおり、本件調査報告書は、退去強制令書が発付された者に対する原則収容主義を前提として、その中で健康状態悪化時の対応がどうあるべきであったかが検討の中心となっている(94頁)。しかし、そもそもウィシュマ氏の収容が、日本が従うべき「法」である憲法及び国際人権法[2]に則ったものかどうか、収容における強大な入管の裁量のあり方の検討は、全く抜け落ちている。したがって、本件調査報告書は、表面的かつ限定的な改善策の列挙に留まっていると言わざるを得ず、本件死亡事件の原因究明・再発防止の検討として全く不十分である[3]。また、本件調査報告書において、ウィシュマ氏の人間としての尊厳を傷付ける取扱いが多数認められ、被収容者に対する処遇の改善も不可欠であるにもかかわらず[4]、この点についての検討も不十分である。

先の入管法改正議論において、最大の焦点の一つとされた本件死亡事件について、このような不十分な検討しか行われず、問題の所在を入管収容施設の職員の意識、情報共有や医療体制などの処遇面に矮小化していることは、誠に遺憾であり、強く抗議する。

真の原因究明・再発防止のためには、処遇のあり方等に加えて、その前提となる収容のあり方、入管の強大な裁量判断の是非が問われなければならない。本声明では以下、特に収容に関する憲法及び国際人権法違反の点を詳述し、ウィシュマ氏の死亡は、人間を人間として扱わない、憲法及び国際人権法に反する恣意的な収容がもたらした結果であることを明らかにする。

第2 本報告書に基づく事実経過[5]

 2020年8月19日、ウィシュマ氏は静岡県内の交番に自ら出頭し、オーバーステイにより現行犯逮捕された。そして同年8月21日、オーバーステイによる退去強制令書の執行を受け、死亡した2021年3月6日までの197日間、名古屋入管収容施設に収容された。

2 ウィシュマ氏に対する収容は、2020年8月21日以降死亡に至るまで、一度も司法審査を経ていない。ウィシュマ氏は、違反調査時に「恋人に家を追い出された」と説明し、遅くとも退去強制令書の執行時点で明確にDV被害を訴え、さらに2021年1月4日の1回目の仮放免申請時点においては仮放免後の住居や身元保証人も確保されていた。そして、入管内部で仮放免不許可と判断とされた同年2月15日時点において既にウィシュマ氏は、車椅子を使用し歩行困難な状態となっていた上、食事量が著しく減少し、嘔吐を繰り返すといった症状が出ており、健康状態が著しく悪化していた。

3 しかしながら、同年2月16日に仮放免不許可処分がなされたため、ウィシュマ氏は同年2月22日に2回目の仮放免申請を行ったものの、2回目の仮放免申請が検討されている間にウィシュマ氏は死亡した。なお、2回目の仮放免申請時点において、ウィシュマ氏は体重が収容時から20kg近く減少し、食事摂取や水分補給もままならず嘔吐が続く状態であり、外部病院での点滴治療を求めていた。

第3 ウィシュマ氏の収容が「法」に則ったものといえないこと、本件調査報告書はその点につき検討をしていないこと

1 身体の自由は、その者が日本国籍を有しているか否か、在留資格を有しているか否かにかかわらず、あらゆる自由の前提となる最も重要な人権の一つであり、最大限保障されなければならない。したがって、収容は最後の手段でなければならず、合理性、必要性、比例性の要素を欠く収容は、恣意的拘禁に該当し、自由権規約9条1項に違反する[6]

他方、入管法52条5項は、退去強制令書が出されたことのみをもって無期限の収容を可能とし、合理性、必要性、比例性の要素を満たさない収容を認めるものである。また、司法審査の機会なく行われる拘禁は自由権規約9条4項に違反する恣意的拘禁となるが[7]、入管法52条5項は、収容の開始や継続にあたり司法審査の機会を提供していない。

2 ウィシュマ氏の収容についても、その開始時において、合理性、必要性、比例性の要素について検討がなされた形跡はなく、入管自身が定めた「DV事案に係る措置要領」にも反し、原則収容主義の下、漫然と収容が開始された。

また、ウィシュマ氏は、違反調査時に「恋人に家を追い出された」と説明し、遅くとも退去強制令書の執行時点で明確にDV被害を訴えて保護を求め、1回目の仮放免申請以降は、解放後の住居や身元保証人も確保され、当時の健康状態が悪化していた事実をも踏まえれば、逃亡の個別的蓋然性はなく、収容の合理性、必要性、比例性を欠くことがより一層明らかとなっていった。ところが、入管においては、法務省が憲法及び国際人権法を踏まえず独自に定めた基準にすぎない2018年2月28日付け通達(通達①)を重視して仮放免許可が適当でない類型に当たるとしたほか、「(新型コロナウイルス感染症対策としては)更に収容人員の抑制を図る必要は乏しい」という独自の現場判断を行い(86頁)、さらには「仮放免を許可すれば、ますます送還困難となる」「一度、仮放免を不許可にして立場を理解させ、強く帰国説得する必要あり」(58頁)と、ウィシュマ氏の心身に圧力をかけて帰国させようという意図をもって、仮放免を不許可とした。

一方、2回目の仮放免申請に対しては、本件調査報告書では入管が仮放免許可の方向で検討を進めていたとされているが、その理由としては、ウィシュマ氏の健康面よりも、介助に伴う職員の負担の増大が重視された形跡が認められる(60頁)。

このように本件でも、原則収容主義の下、法務省独自の仮放免基準や、収容人員を抑制する必要はないという現場判断、それどころか収容を帰国させるための圧力に用いようという意図など、「法」によらない恣意的な収容が行われたものである[8]

3 しかるに本件調査報告書は、ウィシュマ氏に対する入管の収容判断について、憲法及び国際人権法に照らした検討を一切しないまま、ウィシュマ氏が死亡するまで収容を継続した入管の判断を是認している。

日本の入管収容が国際人権条約に反することは、これまで重ねて国連機関等から指摘されてきた[9]。昨年には、2名の収容が恣意的拘禁にあたるとの意見が国連恣意的拘禁作業部会から出されたが、日本政府は、それに対しても「事実誤認である」「収容は入管法に則っている」などと述べて、改善しようとしなかった[10]。本件死亡事故は、繰り返されてきた国際社会からの指摘に真摯に耳を傾けなかった結果とも言いうる。この点何ら顧みない本件調査報告書では、同様の死亡事故の再発を防ぐことは不可能である。

第4 結語

人間を人間として扱わないかのようなウィシュマ氏の施設内の処遇は衝撃的であり、「自由を奪われたすべての者は、人道的にかつ人間の固有の尊厳を尊重して、取り扱われる」とする自由権規約10条に明確に反し、収容施設内の処遇を改革することはもちろん必要である[11]

しかし、より根本的な問題は、処遇の前提としての収容そのものが、強大な入管の裁量によって自由になされてしまうことである。本件におけるウィシュマ氏の収容は、そもそも「法」に則らない、自由権規約9条等に違反する恣意的拘禁であり、恣意的拘禁の状況下で本件死亡事件が発生したという全体像がある。また、本件死亡事件は、偶発的に生じたものではなく、一昨年の大村入管施設内におけるナイジェリア人男性の餓死を含む痛ましい被収容者の死亡事件が繰り返される中で生じたものであることが認識されなければならない。

これまでの死亡事件についても、入管は、今回と同様、決して収容の要件、入管が強大な裁量権を持つことに踏み込むことのない改善策を挙げるだけであった。本件調査報告書においては、改善策の冒頭に「全職員の意識改革」が挙げられている。しかし、退去強制事由該当者であれば自由を奪われるのは当然であるという、他の先進国ではおよそ見られない根本的に差別的な法制、及び、憲法・国際法を軽視する法務省・入管の組織としての姿勢を改めなければ、個々の職員の意識改革も不可能であろう。詐病ではないかと疑った職員の心理は、身体の解放を良しとしない、原則収容主義にこそ、その根源があり、制度的改革なくして個々の職員の意識改革はなしえない。

ウィシュマ氏の死亡事件は、入管の原則収容主義を改めると共に、収容判断に司法審査を導入するなどして、入管の強大な裁量を統制することが必須であることを明らかにした[12]。入管、ひいては国に、真に再発防止の意思があるのであれば、憲法及び国際人権法違反である、入管の強大な裁量による恣意的な収容という根本的な要因に向き合うことが不可欠である。

以上

 

[1] http://www.moj.go.jp/isa/content/001354107.pdf

[2] 憲法98条2項は、「日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、これを誠実に遵守することを必要とする」と定めている

[3] 本声明では直接問題としていないが、他の検証されるべき問題点として、そもそも本件調査は責任者以外非公表の入管職員のみで構成される調査チームによる内部調査であって、有識者は意見・指摘をするに留まること(1-2頁)、本件調査報告書がDV措置要領に基づく聴取がなされず、DVに関するB氏の聴取結果は極めて不十分である中、DV専門家不在の体制でDV被害者として扱う必要が無かったと結論づけている点や入管施設内及び外部病院医師の独立性の問題なども存在することには留意するべきである。

[4] ごく一例として、ウィシュマ氏がカフェオレを鼻から噴出した際の「鼻から牛乳や。」との発言(45頁)や死亡前日の衰弱しきった状態で「アロ…」といった声を発した際の「アロンアルファ?」との聞き返し(49頁)は、ウィシュマ氏の人間の尊厳を傷付ける取扱いである。

[5] 本声明では入管が認定した事実経過を前提とせざるを得ないが、当該事実認定の根拠や客観性は必ずしも明らかでなく(死亡時点において2回目の仮放免申請が仮放免許可方向で検討されていたとする点など)、当該事実認定の正確性については、なお検証を要する。

[6] 自由権規約第9条第1項は、「すべての者は、身体の自由及び安全についての権利を有する。何人も、恣意的に逮捕され又は抑留されない。何人も、法律で定める理由及び手続によらない限り、その自由を奪われない。」と定める。自由権規約委員会の一般意見により「抑留」には刑事拘禁のみならず、入管施設における収容も含まれる。

[7] 自由権規約第9条第4項は、「逮捕又は抑留によって自由を奪われた者は、裁判所がその抑留が合法的であるかどうかを遅滞なく決定すること及びその抑留が合法的でない場合にはその釈放を命ずることができるように、裁判所において手続をとる権利を有する。」と規定している。

[8] 「立場を理解させ、強く帰国説得する」ことを目的とし、ウィシュマ氏に対して仮放免を認めずに収容を継続したことは、拷問又は残虐な、非人道的な若しくは品位を傷つける取扱い(自由権規約7条、拷問等禁止条約16条)にも該当すると考えられよう。

[9] 自由権規約委員会 第6回日本定期報告審査にかかる総括所見(CCPR/C/JPN/CO/6)パラ19、拷問禁止委員会第 2 回定期報告についての総括所見(CAT/C/JPN/CO/2)パラ9、人種差別撤廃委員会 日本の第10回・第11回定期報告に関する総括所見(CERD/C/JPN/CO/10-11)パラ35, 36

[10] Deniz YenginとHeydar Safari Diman(日本)に関する意見58/2020(A/HRC/WGAD/2020/58)

[11] 改革に当たっては、国連被拘禁者処遇最低基準規則(マンデラルール)の遵守が求められる。

[12] 入管法改正案として仮放免以外に収容から解放する措置として「監理措置制度」の導入が含まれていたが、入管にその可否の裁量判断を任せているという点で、仮放免制度と同様に恣意的拘禁を防ぐ手段とはなりえないことは明白である。

「止まらぬヘイトクライムを非難し、政府に緊急対策を求める声明」への団体賛同のお願い

当会は、3月31日付で政府に対しヘイトクライムへの対策を求めた声明を発表しました。

※声明は下記リンクよりご覧になれます。
止まらぬヘイトクライムを非難し、政府に緊急対策を求める声明(2021年3月31日付)

現在、本声明への賛同団体を募っております。
声明と合わせ、今月中に政府へ提出予定です。
賛同頂ける団体は、ぜひよろしくお願いします。


〈賛同方法〉

・賛同方法は以下の2つです。

①申し込みフォームからの賛同
https://forms.gle/bVdzY5UN7oXRtwgr6

②メールから賛同
アドレス:action@gjhr.net
こちらに賛同の旨を送ってください。
※送信の際、タイトルに「止まらぬヘイトクライムを非難し、政府に緊急対策を求める声明への団体賛同」と入れて頂くと判別がしやすいので、ご協力のほどよろしくお願い致します。

〆切日時:2021年4月9日正午

止まらぬヘイトクライムを非難し、政府に緊急対策を求める声明

2021年3月31日
外国人人権法連絡会

去る3月18日、川崎市桜本にある多文化共生を推進する施設「川崎市ふれあい館」の館長である在日コリアン女性宛に脅迫郵便物が届いた。朝鮮人に対する極めて侮蔑的な差別文言を連ねた後に「朝鮮人豚ども根絶やし」「コロナ入り残りかすを食ってろ自ら死ね死ね・・」と14回も「死ね」を繰り返した文書と、コロナウイルス入りの可能性のある、開封された菓子の空き袋が同封されていた。これは脅迫罪にあたる犯罪であり、同26日には館長による告訴状を警察が受理した。
同時に本件は単なる一般の犯罪にとどまらない、差別的動機に基づくヘイトクライムである。「ふれあい館」には2020年1月初めに在日コリアンの抹殺を宣言した年賀状が届き、1月末には爆破予告もされた。加害者は同年12月3日、威力業務妨害罪で有罪となった。しかし、3か月足らずでまた「ふれあい館」宛てに脅迫郵便物が届いたのである。
次から次へと襲う卑劣なヘイトクライムのターゲットとされた被害女性はいつ誰に襲われるかわからないとの恐怖で、防刃ベストを装着する生活を強いられており、その苦しみ、絶望感は想像を絶する。のみならず、属性を理由とする犯罪であることから、同じ在日コリアンという共通の属性を有する人たちにも同様の恐怖をもたらしている。このようなヘイトクライムを放置すれば、在日コリアンというだけで攻撃されても仕方がないとの雰囲気が社会に蔓延し、さらなる差別、暴力、ついにはジェノサイドや戦争につながることは歴史が示しており、決して許してはならない。
現在、コロナ禍において、アメリカでアジア系市民が銃殺されたり、街中で暴力を受けるヘイトクライムが増加していることが報道されている。しかし、それは他人ごとではない。新大統領のジョー・バイデン氏は、3月11日にヘイトクライムを非難し、(アジア系市民は)「道を歩くのに恐怖を感じなければならない。それは間違っている」と発言した。本件に象徴されるように、日本でも同様に、在日コリアンは差別と暴力を受ける恐怖と苦痛から逃れられない日常生活を強いられている。すでに2002年の拉致問題の報道の後、朝鮮学校の生徒たち、たとえば大阪の女子中学生の3人に1人は暴行ないし差別暴言を受けたとの調査結果もある。
バイデン氏は、3月19日、銃撃事件の現地を訪問し、アジア系団体と意見交換し、人種差別に「沈黙するのは加担するのと一緒だ」と語り、連邦議会に新ヘイトクライム対策法制定の必要性を強く訴えた。もとよりアメリカには「ヘイトクライム統計法」があり、連邦捜査局がヘイトクライムを調査・記録し、ヘイトクライム防止法も整備している。ヘイトクライム対策は人種差別撤廃条約上の義務なので、他の多くの国でも対策がとられている。
他方、日本政府はヘイトクライムに対して非難することすらほとんどない。1995年に人種差別撤廃条約に加入して以降、今もって担当部署もなく、調査や関連判例の収集も行わず、何等の対策も行っていない。2016年にヘイトスピーチ解消法が制定されたが、ヘイトクライムについては未だ公的な共通認識自体なく、問題として認定されていない。
国連人種差別撤廃委員会は、2001年以降の4回の審査において毎回日本にヘイトクライム対策を勧告してきた。これに対し、政府は、刑事裁判において差別的動機がある場合量刑事情として適切に考慮されているから特別な対策は必要ないと主張している。しかし、例えば京都朝鮮学校襲撃事件のような顕著な人種差別事件においても刑事裁判では差別性が認定されず、そのような事例はほとんど見当たらない。
差別に基づく事件なのに差別が認定されない、あるいは報復への恐れ、多額の裁判費用といった負担は一方的に被害マイノリティが負わされ、多くが泣き寝入りを強いられてきた。
路上では現在も差別主義団体が闊歩し、インターネット上には毎秒のように差別的な書き込みがなされている。日本社会には差別が蔓延し、コリアンが街中で民族の言葉、名前を表現したり、民族衣装を着ることを避けなければならないほど危険な段階に達している。
私たちは昨年、政府に対しヘイトクライム対策を策定するよう2020年1月及び6月に要請してきたが、政府は無策のまま、今回のヘイトクライムを許した。政府に対し、今度こそ、直ちに、人種差別撤廃条約をはじめとした国際人権諸条約に則って今回のヘイトクライムを非難し、ヘイトクライムを特別な対策が必要な問題として認め、実際に止めるために対策をとることを宣言することを強く求める。たとえば、首相ないし法務大臣が、一連のヘイトクライムを許さないと非難し、「ふれあい館」を訪問して被害当事者たちの話を聞き、政府はヘイトクライムを許さないと宣言すれば、大きな抑止力となり、ヘイトクライム根絶に向けたスタートラインとなるはずだ。
被害者を孤立させず、誰もが差別と暴力に怯えずに暮らすことができる共生社会をつくるべく、1人1人が沈黙することなく、「ヘイトクライムを許さない」との声をあげ、国に対策をとることを求めるよう強く呼び掛ける。


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