”人種差別撤廃施策推進法案”に対する声明

5月22日、「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」が「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律(案)」を参議院に提出しました。
この法案に対して同日、外国人人権法連絡会から以下の声明を出しました。

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 「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律(案)」に対する声明

2015年5月22日
外国人人権法連絡会
共同代表 田中宏 丹羽雅雄 渡辺英俊

 本日2015年5月22日に民主党、社民党及び無所属の議員が参議院に提出した「人種等を理由とする差別の撤廃のための施策の推進に関する法律(案)」(以下「本法案」)は、人種等を理由とする差別の撤廃が重要な課題であることを明言し、このための施策を推進する初めての法案です。国が、人種等を理由とする差別が許されないことを宣言し、それをなくすための施策を進める方針を明確にすることは、この問題に取り組む貴重な第一歩となり、大きな意義を有すると考えます。

 本法案は、特に以下の点で評価することができます。
 
▼人種差別撤廃条約の理念に基づき、人種等を理由とする差別の撤廃のための施策を推進することを目的として掲げ(1条)、条約で求められている、国と地方公共団体が人種差別を撤廃する政策を策定し、実施する義務を法律上の責務として明記した点に意義があります。日本は1995年に同条約に加入して以降、20年もの間、定められた義務をほとんど実施して来ませんでした。本来加入時点で作るべきだったものです
が、この法律が成立することにより、人種差別撤廃条約の義務を果たすスタートを確実に切ることができます。

▼人種等を理由とする差別の禁止の基本原則を明示し(3条)、なかでも、現行法では違法ではない不特定の者に対する公然となされる不当な差別的言動を差別として禁止したこと(3条2項)は画期的です。「朝鮮人を皆殺しにしろ」「Japanese Only」などの不特定の者に対するヘイト・スピーチは差別として許されないと国が非難していることが明確になるからです。このような宣言自体、一定の抑止効果があり、ま
た、差別の被害者に対して国が被害者の側に立つスタンスを明らかにする意味があります。さらに、許されないヘイト・スピーチを実際に抑止し、被害者を救済するための取組みを具体化する出発点となります。

▼6条において、人種差別撤廃が国のみならず、地方公共団体の責務であることを明記したことにより、地方公共団体がそれぞれ人種差別撤廃・禁止条例を制定したり、公共施設を人種差別行為に使わせないよう利用条例のガイドラインを作ったり、地域におけるマイノリティの状況に合わせた人種差別撤廃教育に取り組むなどの施策を促進するでしょう。

▼政府は人種等を理由とする差別の防止に関する基本方針を定め(7条)、講じた施策についての年次報告を国会に提出しなければならないとしたこと(9条)も意味があります。この法律ができれば、政府は人種差別撤廃政策を策定するのみならず、それを具体化し、かつ、その実施状況のチェックを受けることになるので、人種差別撤廃政策を確実に進める制度的保障となりえます。

▼国は人種等を理由とする差別の実態調査を行わなければならないとしたこと(18条)は大きな意味があります。人種差別撤廃政策を策定するための大前提となるからです。国連人種差別撤廃委員会から2001年、2010年、2014年と毎回実態調査を行うよう勧告されてきましたが、この法律によりやっとはじめて国が実態調査を行うことを確実化できます。

▼国及び地方公共団体は、施策の策定及び実施にあたり、差別の被害者等の関係者の意見を反映させるために必要な措置を講ずるものとしたこと(19条)は重要です。例えば、前述の差別の実態調査を行う際にも、どのような調査を行うことが必要なのか、調査の制度設計の段階から差別の被害者の意見を聴くことが必要ですし、差別の被害者の協力なしに正確な調査結果を得ることはできないからです。

▼内閣府に人種等差別防止政策審議会を設置し、本法の担当省庁を内閣府としたこと(20条)も重要です。人種差別は、法案第4条の指摘するように、「職場、学校、地域その他の社会のあらゆる分野」における問題ですから、全省庁があげて取り組むべき課題です。したがって、「広範な分野に関係する施策に関する政府全体の見地からの関係行政機関の連携の確保を図るとともに、内閣総理大臣が政府全体の見地から管理することがふさわしい行政事務の円滑な遂行を図ることを任務とする」内閣府(内閣府設置法第3条)が担当すべきだからです。

▼第三章による人種等差別防止政策審議会の設置は、この法案の肝ともいうべきところでしょう。行政から一定程度独立した「人種等を理由とする差別の防止に関し学識経験を有する者」による専門機関を新設し、そこが基本方針作成などの重要事項を調査審議し、内閣総理大臣などに意見を述べることができることにより、より公正で的確な政策を担保しようとする点を評価できます。

 このように法案は基本的に評価できる一方で、次の改善すべき点があります。

▼被差別者の尊厳を守る目的の明確化(1条ほか)
 本法案は、人種等を理由とする差別の撤廃とは、人種等を異にする者が「相互に人格と個性を尊重し合いながら」共生する社会を実現することを意味するとしています(1条)が、日本社会に現在蔓延するヘイト・スピーチをはじめとする人種差別が在日コリアンなどのマイノリティの人権を侵害している現状から出発すれば、「相互に」尊重するというより、被差別者の尊厳を守ることが重要であることを明確化すべ
きです。
 
▼差別の定義の明確化(2条、3条)
 差別の定義は、何が差別となるかの範囲を画するために重要ですが、本法案の定義、「不当な差別的取扱い」「不当な差別的言動」として、何が「不当」であるのか、「差別」そのものの定義を示しておらず、判断基準として不十分です。すでに国内法となっている人種差別撤廃条約第1条第1項の「人種差別」の定義である「あらゆる公的生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するもの」を条文に明記すべきです。
 
▼「著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的」は不明確(3条2項)
 不特定の者についての不当な差別的言動の定義において、「著しく不安若しくは迷惑を覚えさせる目的」を要件の一つとしていますが、きわめて曖昧で、広い解釈が可能であり、表現の自由に対する過度な規制に結び付く危険があります。例えば「侮蔑若しくは威嚇する目的」に修正すべきです。
 
▼審議会の委員の任命は両議院の同意を要件とすべき(21条2項)
 審議会の委員は内閣総理大臣が任命することとされていますが(21条2項)、両議院の同意を要件とすべきです。人種差別の問題は全社会的な重要な政策課題であり、また、制度的・公的な差別の見直しも重要な課題であることに鑑みると、政府からの一定の独立性・中立性を確保する必要があるからです。
 
▼審議会に差別の被害者を入れるなど意見を反映させるべき(21条2項)
 差別の実情を踏まえた調査審議を行うためには、審議会の委員の構成の多元性を確保することが重要です。したがって、例えば委員の構成について、障がい者基本法第33条2項のように、差別の被害者を委員にしたり、多様な被差別者の意見を聴き、差別の実情を踏まえた調査審議を行うことができることとなるよう配慮することを条文に入れるべきです。

 以上の問題点の修正を含め、本法案について国会で真摯な検討がなされ、1日も早く、人種差別撤廃のための法律が制定されることを強く求めます。

外国人・民族的マイノリティ人権白書2015 発刊しました!

外国人・民族的マイノリティ人権白書2015
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外国人人権法連絡会では、毎年「日本における外国人・民族的マイノリティ人権白書」を発刊しています。
2015年版(2015年4月発刊)では、「ゼノフォビアとヘイト・スピーチ」(第1章)、「移住労働者の受入れ政策」(第2章)、「改定入管法施行3年後の見直しを求める」(第3章)など、多岐の領域にわたって外国人・民族的マイノリティに関連する注目すべき出来事・事象が盛り込まれています。
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人種差別撤廃基本法 モデル案

外国人人権法連絡会の運営委員会において、人種差別撤廃条約の理念に則り、日本における人種差別の撤廃に向けた効果的な政策を行なうための国内法として、「人種差別撤廃基本法案」のモデル案を作成しました。 多くの方に関心を持ってもらうことを強く望んでいます。(2015年1月27日)

※一部修正するとともに、注釈・参考法令を加えました。(2015年2月3日)


人種差別撤廃基本法案

外国人人権法連絡会 運営委員会

枠組:人種差別撤廃条約の実施を確保するため、国と地方公共団体の人種差別を撤廃する責務を定め、実施に向けての実態調査及び提言権限を有する「人種差別撤廃政策審議会」(障害者基本法における「障害者政策委員会」類似の国家行政組織法8条委員会)を内閣府に新設する。

第1条 目的
この法律は、すべての人が生まれながらにして基本的人権を等しく享有するかけがえのない個人として尊重されるべきとの世界人権宣言の理念にのっとり、差別がマイノリティ 1)の尊厳を傷つけ、かつ、自由、平等、平和な共生社会の実現並びに諸国間の友好的かつ平和的な関係に対する障壁となることに鑑み、人種差別が社会において許容されないものであることを宣言するとともに、人種差別の撤廃に向けた国、地方公共団体等の責務を明らかにし、人種差別撤廃のための施策を総合的かつ効果的に推進し、人種差別撤廃条約及び憲法第14条の適確な実施を確保することを目的とする 2)

第2条 定義
「人種差別」:人種等の属性にもとづくあらゆる区別、排除または制限であって、政治的、経済的、文化的その他の社会生活の分野における平等の立場での人権及び基本的自由を認識し、享有し又は行使することを妨げ又は害する目的又は効果を有するものをいう 3)
「人種等」 4) :人種、皮膚の色、世系、民族的もしくは種族的出身、国籍 5)、門地若しくは社会的身分

第3条 差別の禁止 6)
何人も、下記にあげたことその他の人種差別をしてはならない。

  1. 採用、労働条件その他の労働関係、医療、社会保障、教育、不動産、物品若しくは役務の提供、団体加入などのあらゆる社会生活における人種等を理由とする差別的取扱い 7)
  2. 意図的な、公然たる、人種等の共通の属性を有する特定または不特定の者についての 8)、当該属性を理由とする侮蔑、威嚇その他の差別的言動 9)
  3. 1の差別的扱いを助長する、特定または不特定の者についての公然たる差別的言動 10)

第4条 国及び地方公共団体の責務
国及び地方公共団体は、人種差別撤廃条約の趣旨にのっとり、人種差別を批判し、人種差別を撤廃し、すべての人種等の間の理解を促進する政策を策定し、遂行する責務を負う 11)

第5条 基本方針

  1. 政府は、人種差別の撤廃に関する施策を総合的かつ一体的に実施するため、人種差別の実態に応じた、差別撤廃に関する基本方針を定めなければならない。
  2. 内閣総理大臣は、基本方針を定めるにあたっては、関係行政機関の長と協議するとともに、人種差別撤廃政策審議会の提言を踏まえて基本方針の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。その際、人種差別の被害者その他関係者の意見を聴き、その意見を尊重しなければならない 12)

第6条 国及び地方公共団体の措置

  1. 国及び地方公共団体は、これまでの政策を再検討し、人種差別を生じさせたり、永続化させたりする効果を持ついかなる法令も改正し、廃止し、無効にするために効果的な措置をとる。 13)
  2. 国及び地方公共団体は、人種差別を禁止する法制度を整備する 14)
  3. 国及び地方公共団体は、人種差別行為の防止、人種差別行為からの保護及び被害者の救済のための効果的な制度を整備する 15)
  4. 国及び地方公共団体は、人種差別撤廃条約に合致するよう法令及び条例を解釈し、運用・執行する。
  5. 国及び地方公共団体は、人種等の間の障壁を撤廃する手段を奨励し、人種等の間の分断を強めるようないかなる動きも抑止する措置をとる 16)
  6. 国及び地方公共団体は、すべての公務員が人種差別にたずさわらず、また、人種差別を後援、擁護、支持しないよう、研修を行う 17)。公務員が人種差別に関わった場合に懲戒の対象とする 18)
  7. 国及び地方公共団体は、人種差別につながる偏見をなくし、異なる人種等の諸集団の間での理解と友好を促進するため、人種差別撤廃条約などの国際人権諸条約の普及を含む教育、啓発、文化活動、その他の交流の促進その他の措置を行う 19)
  8. 国及び地方公共団体は、第1条に規定する社会の実現を図るための施策が国際社会との協調と密接に関係していることに鑑み、国際連合、近隣諸国、日本に居住する外国籍者の出身国をはじめとする関連諸機関及び関連諸国などとの国際的協調の下に図られなければならない 20)
  9. 国及び地方公共団体は、人種差別の撤廃に向けた取組が促進されるよう、国内外における人種差別撤廃の取り組みに関する情報の収集、整理及びそれらの情報提供を行う 21)
  10. 国及び地方公共団体は、人種差別の撤廃に取り組む民間の団体及び地域における取組が果たしている役割の重要性に留意し、これらの団体等との緊密な連携の確保及びそれらの活動に対する必要な支援に努めるものとする。
  11. 国及び地方公共団体は、インターネットにおける、第3条2又は3に該当する表現について、その制限に関する事業者の自主的な取組及び被害者の取組を支援するために必要な措置を講ずる。

第7条 年次報告
政府は、毎年、国会に、政府が講じた人種差別の撤廃に関する施策の実施状況に関する報告書を提出しなければならない 22)

第8条 法制上の措置等
国及び地方公共団体は、この法律の目的を達成するため、必要な法制上及び財政上の措置を講じなければならない 23)

第9条 人種差別撤廃政策審議会の設置 24)

  1. 国は、内閣府に人種差別撤廃政策審議会を置く。
  2. 人種差別撤廃政策審議会は、下記の事務を行う。
  3. (1) 内閣総理大臣に対し、人種差別撤廃の基本方針について、提言を行う。そのために、人種差別の実情について全国的な調査を行い、報告書を作成する。
    (2) 日本の人種差別に関する重要事項状況について調査審議し、人種差別の撤廃のために必要と認めるときは、内閣総理大臣または関係機関の長に対し、提言または是正勧告を行う。
    (3) 政府が国連に提出する人種差別に関する報告書について、意見を述べることができる。
    (4) その事務を遂行するために必要と認めるときは、関係機関の長に対し、資料の提出、意見の表明、説明その他必要な協力を求めることができる。
    (5) 事務を遂行するために特に必要があると認めるときは、前項に定める以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
  4. 内閣総理大臣または関係機関の長は、前項(2)の規定による是正勧告に基づき講じた施策について審議会に報告しなければならない。

第10条 人種差別撤廃政策審議会の構成

  1. 人種差別撤廃政策審議会は、15人以内の委員により構成する。
  2. 委員は、人種などの属性におけるマイノリティに属する者、人種差別と取り組んで来た団体、人種差別に関する研究者・弁護士、人種差別撤廃教育の専門家、差別の実態調査に関する社会調査・統計の専門家、差別の被害者を扱うカウンセラー等の中から、両議会の同意を経て、内閣総理大臣が任命する。この場合において、委員の構成については、審議会が多様なマイノリティの意見を聴き、差別の実情を踏まえた調査審議を行うことができるよう、配慮されなければならない 25)

第11条 人種差別撤廃政策地方審議会 26)
人種差別撤廃政策審議会は、下記の事務を行う。

  1. 都道府県は、人種差別撤廃のための担当部署を設置し、また、政策などの立案、諮問、提言、監視機関として人種差別撤廃政策地方審議会を設置しなければならない。
  2. 市区町村は、人種差別撤廃のための担当部署を設置し、また、政策などの立案、諮問、提言、監視機関として人種差別撤廃政策地方審議会を設置することができる。

第12条 事業者の責務 27)
事業者は、その事業活動を行うに当たって、人種差別が行われることのないよう必要な措置を適切に講ずるよう努めなければならない。

第13条 私人の責務 28)
すべての私人は、人種差別の撤廃の推進に寄与するよう努めなければならない。

【注釈・参考法令】
1) 「マイノリティ」との用語は、国内法となっている自由権規約第27条の原文(英文)で使われている。その他、使われている国連文書は、国連マイノリティの権利宣言、国連自由権規約委員会の自由権規約第27条に関する一般的意見、国連人種差別撤廃委員会2014年総括所見パラ11他、国連自由権規約委員会2014年総括所見パラ12等。
2) 障害者基本法第1条参照。
3) 人種差別撤廃条約第1条1項から「優先」を除いたもの。「公的生活」との用語はわかりにくいので、「社会生活」に変更した。
4) 人種差別撤廃条約第1条1項及び憲法第14条にあげられている人種主義関連の事由。
5) 「国籍」は条約上差別事由として明記されていないが、国連人種差別撤廃委員会一般的勧告30及び国連自由権規約委員会の自由権規約第27条に関する一般的意見により、原則として差別禁止の対象となっている。日本では民族差別は主要に国籍差別の形態をとる。
6) 障害者基本法第4条1項参照。
7) 人種差別撤廃条約第5条。
8) 直接対象となる人々に対して向けられる必要はない。
9) 人種差別撤廃条約第4条が対象とするヘイト・スピーチのうちの悪質なものの例示。
10) 「外国人お断り」とのポスターなどを想定している。
11) 人種差別撤廃条約第2条1項本文及び障害者差別解消法第3条。
12) 障害者基本法第10条。
13) 人種差別撤廃条約第2条1項(c)。
14) 人種差別撤廃条約第2条1項(d)。
15) 人種差別撤廃条約第6条。
16) 人種差別撤廃条約第2条1項(e)。
17) 人種差別撤廃条約第2条1項(a)(b)、障害者差別解消法第5条。
18) 人種差別撤廃条約第4条(c)。国連人種差別撤廃委員会2014年総括所見パラ11。
19) 人種差別撤廃条約第7条。
20) 障害者基本法第5条。
21) 人種差別撤廃条約第7条。
22) 障害者基本法第13条。
23) 障害者基本法第12条。
24) 障害者基本法第32条。
25) 障害者基本法第33条2項。
26) 障害者基本法第36条。
27) 環境基本法第8条。
28) 障害者差別解消法第4条。

ヘイト・スピーチ対策に関する政党アンケート-2:回答結果

11月19日付で9つの政党に「ヘイト・スピーチ対策に関する政党アンケート」に送付したところ、11月28日時点で7つの政党から回答を頂きました。その結果を以下に公表します。
協力してくれた各政党に感謝の意を表します。


『ヘイト・スピーチに関する政党アンケート』 回答結果 (2014年11月28日現在)

作成:外国人人権法連絡会

政党名〈質問1〉 ヘイト・スピーチ対策の必要性〈質問2〉 人種差別撤廃基本法等の制定
自由民主党必要検討中
公明党必要「賛成」「反対」のいずれでもない
民主党必要賛成
維新の党必要未確定
次世代の党未確定未確定
日本共産党必要賛成
社会民主党必要賛成
生活の党(無回答)
新党改革(無回答)

【アンケート項目】 (要約) ※送付した質問文は、コチラ
1.  国が具体的なヘイト・スピーチ対策を策定する必要性について、 □ ある   □ ない
≪理由≫

2.  人種差別撤廃基本法等の制定について、 □ 賛成  □ 反対
≪理由≫

3. その他、関連する党の見解、実施した活動、選挙公約について


【各政党の回答】

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▼自由民主党

  1. ある
    ≪理由≫ヘイト・スピーチの対策は必要と考える。
  2. 党として検討中
    ≪理由≫ヘイト・スピーチ同様に表現の自由の問題があるため人種差別撤廃法の制定は非常に困難と認識しているが、幅広い見地から検討を重ねていく。
  3. 本年9月ヘイト・スピーチ対策等に関する検討PTを設置した。先述同様、ヘイト・スピーチの対策は必要と考えるが、表現の自由の観点から法規制については非常に難しいと認識しており、幅広い見地から検討を重ねていく。

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▼公明党

  1. ある
    ≪理由≫近年、ヘイト・スピーチが大きな社会問題になっており、国際社会からも厳しい指摘がなされています。諸外国の規制例や論点、また、有識者をはじめとする国民の皆様のご意見を踏まえつつ、具体的な規制のあり方について検討を進めたいと考えます。
  2. 現段階では「賛成」、「反対」のいずれでもない
    ≪理由≫人権を重視する立場から、人種差別撤廃基本法を求める議員連盟に公明党の参議院議員も所属しており、議論を深めているところです。その上で、基本法制定の必要性や、制定する場合にはどのような内容とすべきかなど、引き続き、党内における検討を継続していきたいと考えております。
  3. ヘイト・スピーチについて、様々な観点から検討を進めたいと考え、本年9月10日に公明党としてヘイト・スピーチ問題対策プロジェクトチームを設置し有識者との意見交換を重ねてきたところです。今後、プロジェクトチームとして考え方を取りまとめ、提案したいと考えております。

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▼民主党

  1. ある
    ≪理由≫人種・民族・皮膚の色など共通の属性の違いを理由として、他者(不特定多数を含む)に対して煽動的・攻撃的に差別表現・行動をとる者が、出現・増加している。この状況に対し、国連人種差別撤廃委員会から、日本政府としての取り組みが十分に行われていないという指摘がなされ、差別禁止法制定も含む勧告が2014年を入れて3度も行われている。国際世論もさることながら、国民政党として、日本国内のこの状況を放置することは許されないとの認識のもと、ヘイト・スピーチ対策に取り組まねばならないと考えている。
  2. 賛成
    ≪理由≫民主党は、超党派議連で行われている議論に賛同し、他党とともに、法制定を推進すべく、政党政策責任者会議等の席でも率先して働きかけを行ってきた。人種等を理由とした差別行為・言動が行われることを放置することは、決して許されるべきではなく、また、1995年に加入した人種差別撤廃条約を速やかに実施するためにも、人種差別撤廃基本法のような法律の制定が必要であると考えている。
  3. <臨時国会中>民主党として、超党派議連で取りまとめを行ってきた法案骨格を確認するとともに、できる限り多くの政党と連携して法案を提出・成立させるための働きかけを行ってきた。表現の自由を保障しつつ、差別的言動・行為を禁止してゆく第一歩となる法律の制定を考えている。
    <選挙にあたって>民主党の考え方を表す柱の一つとして、ヘイト・スピーチ対策を行うことを、マニフェストを含む民主党の政策に位置づけ、訴えていく。

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▼維新の党

  1. ある
    ≪理由≫表現の自由は保障されるべきであるが、極端に差別的、暴力的な表現については、差別
    される人の人権を保障するため、一定の制限はやむを得ない。
  2. 党としての立場は未定
  3. 民主党・維新の党共同で、「共に実現を目指す共通の政策」を発表した。その5項目中の1項目が「ヘイト・スピーチ規制法の制定」である。

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▼次世代の党

  • 8月に出来たばかりの政党であり、本件について結論が出ていません。

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▼日本共産党

  1. ある
    ≪理由≫各地でおこなわれているヘイト・スピーチを許さない世論と環境をつくり、人々の権利と尊厳を守っていくことは、政治の責任です。いくつかの自治体では、ヘイト・スピーチにかかわる団体に会場使用を認めない措置をとっている例もあります。国としても、ヘイト・スピーチ対策のために現行法のもとでどのような対策を講じられるかを、省庁を挙げて検討すべきです。そのためにも、日本政府としてヘイト・スピーチを許さない毅然とした姿勢を示し、ヘイト・スピーチにかかわる団体は、健全な市民社会や民主政治と相いれない勢力であることを明確にしなければなりません。
  2. 賛成
    ≪理由≫人権と民主主義についての国際到達点からみて、ヘイト・スピーチを根絶する取り組みの一環としても、人種差別撤廃基本法の制定は必要と考えます。
    • 「人種差別撤廃基本法を求める議員連盟」に参加しています。国立市議会、名古屋市議会、奈良県議会で、ヘイト・スピーチ対策を求める意見書について提案、賛成しました(それぞれ採択)。
    • 2013年、14年におこなわれた「仲良くしようぜパレードin大阪」、「差別撤廃東京大行進」に党の国会議員や地方議員、役員らが参加しました。
    • 東京の新宿区では2013年3月の区議会で党議員が新大久保でのヘイトスピーチ・デモについて区長の見解をただす質問をおこないました。その後も区議団が区側に対し、区内でヘイトスピーチ・デモをさせないよう働きかけてきました。
    • 2014年11月の新宿区の区長選挙では、「ヘイト・スピーチに毅然と対応する」との公約をかかげた弁護士の岸まつえ候補を推薦し、日本会議に所属する元自民党都議との一騎打ちをたたかいました。岸候補は、当選には至らなかったものの、4割近くを得ました。選挙の論戦を通じて、相手候補に「ヘイト・スピーチ反対」、前区政の平和施策の「継続」を言明させました。
    • ※2014年総選挙政策においても「各分野政策」でヘイト・スピーチに関して取り上げています。近く日本共産党ホームページ上にアップしますので、あわせてご覧下さい。

回答結果一覧に戻る

▼社会民主党

  1. ある
    ≪理由≫社民党は差別や敵意をあおるヘイト・スピーチについて、その定義を明確化した上で根絶に向けた取り組みを訴えてきました。現行法においても対応は十分可能だと考えますが、新たな法整備を行うのであれば、表現の自由に留意しつつ進めるべきです。
  2. 賛成
    ≪理由≫包括的な人種差別禁止の法整備は社民党の長年の主張です。政府から独立した実効性のある人権救済機関を設けるための「人権侵害救済法」などとともに、制定に全力をあげます。
  3. 選挙公約には「差別や敵意を煽るヘイト・スピーチを規制する人種差別禁止法を制定します」「政府から独立した実効性のある人権救済機関を設けるため人権侵害救済法を制定します」と明記しているほか、「男女平等の社会づくり」や「共生・人権の花開くまちを」など、人権政策を列挙した「政策集」を作成しています。

  • 生活の党、新党改革からは回答が届いていません(2014年11月28日時点)
回答結果一覧に戻る
【この件に関するメディア取材 お問い合わせ先】
移住労働者と連帯する全国ネットワーク(移住連)
TEL:03-3837‐2316
FAX:03-3837‐2317
e-mail:smj-office(a)migrants.jp

ヘイト・スピーチ対策に関する政党アンケート

*以下のアンケート要請文を各政党に送付しました。回答が集まり次第、このホームページで公表します。


今年8月、国連人種差別撤廃委員会から、ヘイト・スピーチに対して断固として取り組むよう、また、ヘイト・スピーチを含む人種差別全体についての実態調査を行い、包括的な人種差別禁止特別法を制定するよう、2001年、2010年に引き続き、3度目の勧告が出されました。

私たちは、勧告を真摯に受け止め、人種差別撤廃条約を着実・誠実に実施するため、まず理念法である人種差別撤廃基本法を直ちに制定することが適切だと考えています。具体的には、障害者差別解消法策定を準備する役割を担った障害者基本法をモデルとし、下記の内容を想定しています。

○人種差別を禁止する原則規定を置く。

○国・地方公共団体が総合的な人種差別撤廃政策を策定し、実施する責務を有する。

○国は差別撤廃基本計画を策定し、毎年の実施状況を国会に報告する。

○内閣府に、障害者基本法で設置されている障害者政策委員会と類似の人種差別撤廃政策審議会を設置し、ヘイト・スピーチを含む人種差別の全国的な実態調査を行い、人種差別撤廃政策についての提言を行う。

去る11月18日、安倍晋三首相は21日に衆議院を解散し、総選挙を行なうことを表明しました。そこで私たちは、総選挙にあたっての各党のヘイト・スピーチ政策を明らかにしたいと考えました。

そこで、下記の2点についてのご意見をうかがいます。ご多忙のなか恐縮ですが、誠意ある回答をお願い致します。

◆恐れ入りますが、11月26日(水)までに、下記へお送りください。

回答はホームページ等で公表いたします。

2014年11月19日 外国人人権法連絡会


1.  国が、具体的なヘイト・スピーチ対策を策定する必要性について

□ ある    □ ない

≪理由≫

2.  人種差別撤廃基本法等の制定について

□ 賛成    □ 反対

≪理由≫

その他に、人種差別撤廃基本法の制定、ヘイト・スピーチ対策に関連して党の見解、実施した活動、選挙公約などがありましたら、ご記入ください。